次なる照準は「汎用型人工知能」 最先端の研究はマーケティングをどう進化させる?
人工知能の歴史は1956年から始まり、長い間研究が続けられ改良が進んできた。
人工知能、広告界と予測。
「人工知能の進化は、これまで個人の感覚やセンスとみなされ、科学的に解明されてこなかった創造的活動を行う人間の思考プロセスをも理解することにつながるであろう」と話す中川聰氏。広告コミュニケーションなどクリエイティブな仕事に携わる人は、この技術にどう向き合い活用すればよいのだろうか。
人間中心のデザイン思想に基づき、デザインの開発過程に科学的考察を積極的に取り入れてきた中川聰氏。2010年からは人間の感覚とセンシングテクノロジーを結びつけた「SUPER SENSING DESIGN」の研究開発に着手している。『身体機能』を持たない人工知能の活用を考える際、その機能の代替としてのセンサーとの融合に次なる可能性を見出す中川氏。その未来構想は、人間を中心にしたマーケティングや広告・コミュニケーションにどう生かせるのだろうか。
私たちは目の前に出現する対象に評価を下す際、過去の記憶をその基盤としている可能性が高いと考えられています。デザインに対する評価もそのひとつ。ここで重要なのは、記録と記憶は別のもので、記憶とは記録の一部が主観的な印象や感情を伴って、自らの生き延びるための知恵として形づくられている点です。
そして人間はその記憶を毎時、人間の感覚器官から入ってくる情報にもとづいて書き換えている可能性が高い。人工知能、そしてセンサーの進化・浸透により、人間では処理できなかった大量のデータを瞬間的に収集・処理することが可能になれば、これは人の記憶、さらには評価や創造といったプロセスにも大きな影響を与えるのではないかと考えます。つまり私は人工知能によってつくりだされる新たな情報や、またそれが存在することによって影響を受けるであろう人間の思考や行為に従って、我々の生活がどのように変化していくのかに大きな関心を持っているのです。
これまで私たち人間は、過去に自分の脳に記憶されたり、感覚器官が捉えた「現在」の情報を使いこなしながら創造的な活動を営んできました。これが20世紀型の工業主義社会を支えてきたひとつの大きな精神文化の基盤だと言えます。それに対して21世紀を迎え …