ビッグデータ活用のなかでも、特に広告の効果・効率を高める目的でその活用を行う際、注目すべきデータや、分析において必要な視点・スキル、そして期待できる成果とは?海老根智仁氏(オプト 会長顧問)が解説する。
ビッグデータ時代の広告と、それを支える人材とは?
1.広告は「枠」から「ユーザーID」へ
膨大なユーザーが存在するネットにおいて、"一生の顧客"となり得るユーザーを見つけ、確実にメッセージを届けなければならない。DSPなどに代表される広告配信技術は、これを実現するための仕組み。
2.「広告プランニング」から「来訪プランニング」へ
広告枠は、数ある集客手段のうちの一つでしかない。ユーザーをサイトに来訪させる多岐にわたるチャネルを、トータルにマネジメントする意識とスキルが必要。
3.「デジタルCMO」の育成が急務
テクノロジーに関する知識と、経営者視点を持ち、マーケティング・コミュニケーションの視点で戦略を考えられる人材が、経営層にも現場レベルにも必要。
「ビッグデータ」と一口に言っても、それが意味するデータは大きく2つに分類できます。売上情報など、企業内のデータベースに格納できる「構造化データ」と、格納しにくいさまざまな画像、音声や映像などといった「非構造化データ」です。インターネットやモバイルデバイスの普及に伴い、人々のWEB・デジタル上での行動などによって生み出される非構造化データの量が急速に増えました。
データそのものが増えたことはもちろんですが、より注目すべきは、データとデータがリアルタイムにつながるようになったことでしょう。これまでのマーケティングでは、「人口属性基準(性別、年齢、職業、所得、家族構成など)」「地理基準(住んでいる国や地域)」「心理基準(気分、ライフスタイル)」「行動基準(購入履歴、購入時の態度・反応)」といったセグメント基準を軸に、いわゆる"ヨコ割り"でターゲットを想定してきました。しかし、今やこうした情報はつながり合い、マーケティングは"タテ割り"セグメントの考え方、つまり比較的小口集団に向けて行動基準中心に行うものになりつつあるのです(図1)。インターネットの普及により、タテ割りのセグメントに対しては、テストマーケティングがしやすいのが特徴です。「都内在住のF1層」ではなく、「平日の日中、都内で活動する20~24歳OLで、月に1度以上ネットショッピングを利用する人」といった、従来よりも属性や趣味嗜好が限定されたターゲットにアプローチし、PDCAをスピーディーにまわしていく。見込み客を、真の顧客に育てやすい環境が整いつつあるのです。これが、ビッグデータがもたらすマーケティングの変革だと考えています。