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※本インタビューでは、「個人情報」適用対象外の、購買履歴や健康情報といったデータについて主に「生活者情報」と総称しています。
ビジネスにおける活用可能性に期待が高まるビッグデータ。技術の発展やノウハウの蓄積により、組織を超えたデータの統合・分析や新規ビジネスの創出など、さらに高度な活用へのニーズも今後はますます増えていくでしょう。しかしその一方で大きな課題となるのが、「個人情報」の保護、そして「プライバシー」の保護に関する対策です。「個人情報」とは「個人情報保護法」において定められた明確な定義があり、「個人が特定できるかどうか」が重要なポイントです。
しかし、個人情報保護の適用対象外になっている生活者情報からのプライバシー侵害が問題になるケースが国内外で発生しています。個人情報に該当しないデータであっても、たとえばソーシャルメディア上の行動履歴は他のデータと組み合わせることで個人が特定できる可能性があります(「情報の再特定」)。技術が進歩すればするほど、こうしたことが簡単にできるようになってしまうのが、ビッグデータ利活用の可能性であり、リスクもでもあります。技術を進歩させる一方で、プライバシー保護の観点から何がリスクになり得るかを考え、活用にあたってのルール・方針を決める。ビッグデータ時代の生活者情報の利活用に向けたルール・基盤づくりは、この2つを常に両輪に据え、研究・議論を進めなければなりません。
私たち博報堂と日立製作所は4月、マーケティング領域におけるビッグデータ利活用事業の提案力を強化することを目的に、協働プロジェクト「マーケット・インテリジェンス・ラボ」を設立しました。両社がそれぞれ培ってきた技術やノウハウを融合させながら、独自の技術・ソリューションの開発や、ビッグデータ利活用を支援するサービスの提供などを行っています。このプロジェクトにおいて重視しているのが、「生活者目線」です。生活者にとってその技術はどんな意味を持つのか。その技術をビジネスに適用していくことで、生活者にどんな影響があるのか...。
リターゲティング広告やECなどのレコメンデーション機能の精度の向上を見ても明らかですが、技術は急速に進化を遂げていきます。来る未来に向け、「個人情報」だけでなく「プライバシー」の領域も含めて、その取り扱い・保護について並行して議論していく必要があるのです。これは米国やEUをはじめ、世界的な動きでもあります。
政府は現在、個人に関するデータを利活用する際の新たなプライバシー保護対策について検討を進めています。すでにそうしたデータをビジネスの現場で活用している企業も少なくありませんから、国と企業がともに議論し、日本の現状とめざす未来に合ったあり方を探っていくべきでしょう。