
ライオンが2007年から運営している健康食品の通販サイト「LIONウェルネスダイレクト」では、動画を活用している。
スマートフォンの普及により、拡大に弾みのつくEC市場。アマゾンや楽天も大きな勢力となっています。そして小売店の売上高が下がる一方で、伸びているECに参入するメーカーも増えてきました。ここでは近年のEC市場の動向と、メーカーだからこそ実現できるEC施策について考えます。
アマゾン、楽天は「チャネル」
多くの業界が売上を伸ばすことに苦慮している中、EC市場は以前よりは伸びが鈍化しているとはいえ、成長を続けている。ここ数年のEC市場の傾向として、日本通信販売協会(JADMA)理事主幹研究員の柿尾正之氏は、「2極化」を挙げた。2極化のひとつは、amazon.co.jp(アマゾン)や楽天などのWEB上にある店舗、そしてもうひとつが、メーカーが展開するECサイトだ。
米アマゾン・ドット・コムの2012年12月期の日本における売上高は、78億ドル(発表時の為替レートで7300億円)。楽天市場の12年12月期の流通総額は1兆3000億円程度だったという。一見、楽天市場のほうが優位に見えるが、アマゾンの売上高は、直販売上やモール事業などによる手数料収入といったアマゾンジャパンとしての売上高と見られ、アマゾンのサイトに出店(出品)する他社の売上高を含んだ「amazon.co.jpサイト全体の流通総額」は1兆円を超えている可能性があると言われている。いずれにせよ、この2つのネット通販サイトが代表的存在であることに疑いの余地がない。
ではなぜ、アマゾンや楽天にユーザーが集中しているのだろうか。これに対し柿尾氏は「店舗ではありえないほどの深くて幅広い品ぞろえがあります。さらには、面倒な会員登録も一度行ってしまえば、その後スムーズにあらゆるものが購入できることがユーザーにとって大きなメリットであり、2サイトが伸長している理由でしょう」と語る。例えば、アマゾンで「トマトジュース」と検索すると2000件以上の商品がヒットする。明らかに近所のスーパーマーケットでトマトジュースを2000点も扱っていないだろう。
また最近では、家族などからアマゾンの評判を聞いたシニア層の利用も増えているという。利用者増大を受け、販売チャネルのひとつとして、アマゾンに出品、楽天に出店するメーカーが増えている。しかし、アマゾンや楽天に出店(出品)することは通販事業を行うこととは異なる。なぜなら基本的に顧客リストをコントロールできないことが、その理由である。