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広報のための行動インサイト

効きすぎ注意!抗えない「行動のクセ」を悪用していないか?

山田 歩(滋賀県立大学)

不祥事。誤報。そのときに必要なコミュニケーションとは。行動科学のインサイトを使って広報実務を点検します。

夜勤明けの「休暇取得」を申請式から初期設定に変更したら、休暇取得者が前年比3倍に。これは警察が行った休暇取得促進の取り組みの成果です*1。それまで休暇取得には同僚との調整や上司への申請が必要だったこともあり、「迷惑をかけてしまうかも」といった気持ちがハードルになって、休暇消化は伸び悩んでいました。初期設定を「出勤」から「休暇」にして休暇取得の心理的ハードルを下げ取得を促進したのです。2019年ベストナッジ賞を受賞した「ナッジ」の好例です。

*1 中部管区警察局岐阜県情報通信部・関東管区警察局静岡県情報通信部(2019). オプトアウト方式による休暇取得の促進 行動経済学会第13回大会

ナッジは人びとが選択する文脈を変えて行動変容を促す働きかけのことを言います。「命令」や「禁止」と違って、主に「行動のクセ」を活用した働きかけが行われます。簡単に実施できるものが多く、「人を動かす」コミュニケーションツールとして利用が広がっています。

選択の誘導

しかし、ナッジが倫理的批判にさられていることはあまり知られていません。もっとも代表的な批判は個人の「選択の自由」を奪っているのではないかというものです。

「臓器提供者」を増やすナッジを例に取り上げて説明しましょう。臓器提供を意思表示する方式には大きく、①同意の意思を自発的に表示する「明示的同意」方式と、②拒否の意思表示をしなければ同意とみなされる「推定同意」方式があります。個人は自発的に...

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