顧客理解や従業員理解に欠かせないアンケート。より良い質問の作法とは。行動科学のインサイトを使って広報実務を点検します。
顧客とのコミュニケーションに欠かせない利用者アンケート。よく見かけるのが、「弊社のサービスで改善を望むことをご記入ください」といったように、問題点や改善点をたずねる質問です。言ってみれば「ダメ出し」をお願いするわけですが、「何が良かったか」ではなく「何が悪かったか」をたずねるのは、ネガティブなフィードバックの方がサービス改善に直接的に活かしやすいからでしょう。顧客志向の良い実践であるように見えます。
「ダメ出し」質問の副作用
しかしながら、この「ネガティブフィードバック」偏重のアンケート実践は行動科学的には奇妙なところがあります。まず、サービスの利用者は日ごろ、ネガティブなことだけでなくポジティブなことも体験しているはずです。ネガティブな体験ばかりを思い起こさせる質問を受けたとき、サービス全体の記憶がネガティブな方向に歪む可能性があります。さらに、「悪いところ探し」をさせることで、ポジティブともネガティブともハッキリと意味づけがされていなかった出来事がネガティブに解釈し直される可能性もあります。
「サービス改善のために」とネガティブな体験をたずねたばかりに、顧客の中でネガティブな記憶が優勢になり、満足感が下がったり、「利用を控える」といった行動まで引き起こしかねません。
「ほめ」質問の効果
では、アンケートのなかで「ほめてもらう」質問をしたらどうでしょうか...