社会からの信用が問われ、ビジネスに倫理が必要な時代。何らかの葛藤に直面した時、どう筋道を立てていけばいいのか、組織を取り巻く事象から考えます。
倫理綱領(Code of Ethics)をご存知でしょうか。企業が社是や社訓よりも具体的な行動指針として制定するものから、業界が自主規制として立てるもの、さらに専門職集団が自らの専門職の価値を社会に提示し、その責任を明示するものまで、様々な綱領があります。
PRや広報の業界では、日本パブリックリレーションズ協会が、協会と会員が自らの行動を判断し行動する際の指針として倫理綱領を定めています。また、米国PR協会(PRSA)や国際PR協会(IPRA)が倫理綱領を定めています。以下ではあえて米国PR協会の倫理綱領を取り上げてみたいと思います。そこには、実例に基づいた不適切行為の具体例が挙げられているからです。
米国PR協会の倫理綱領
まず、この倫理綱領では、同協会の会員だけでなくPR・広報担当者なら備えるべき価値が提示されています。それは、アドボカシー、正直さ、専門知識、独立性、忠誠、公平性の6つです。なおアドボカシーとは、広報において組織やクライアントの声を代弁し、広聴において社会の声を代弁するという意味で、公益的な活動でよく使われます。
次いで、これらの価値に基づき、6つの行動規定を定めています。第一は情報の自由な流れです。次の不適切行為が挙げられています。スキーメーカーの広報が、スポーツ雑誌のコラムニストに高価なスキー用具をプレゼントし、好意的な記事を書いてもらう。これは正直さという価値を壊し、情報の流れを歪めてしまいます。また、SNS上の広報活動につけられた批判コメントに応じる際...