2020年11月24日にNHKから、筆者のような大学関係者にとってはそこそこ衝撃的な発表がありました。俳優の松坂桃李さん主演で土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』の制作が始まるというものです。公式サイトによると、「名門大学の広報マンに次々と降りかかる不祥事対応の嵐!『カーネーション』の脚本家・渡辺あやが現代社会を斬るブラックコメディー!」とあります。
主人公の設定は、大学に中途採用された広報の担当者で、前職がテレビ局のアナウンサー。「大学」「中途採用」「広報の担当者」「前職がテレビ局」というワードが筆者と重なり、感情移入をしてしまいました。ちなみに監修はある大学の広報の専門家がするそうです。
発表を聞き、「大学職員が主人公のドラマができる時代がくるとは。大学職員もメジャーになったものだな」と思いました。もっとも、大学職員の中でも大学にしか存在しない教務や学生支援部署(事件やトラブルの一報はここに入る)ではなく、一般的な企業には必ずある広報部署の担当者を主人公にしたあたりは、あまりマニアックにしてしまうと視聴者がついてこられないからでしょうか。
本連載2回目でも考察しましたが、大学において広報は後発部署、さらに広報という名前がついても学生募集に直結する受験生へのアプローチを中心とする「入試広報」が重視される傾向が強いのが現状です。入試広報以外の「大学広報」は大学内では周辺的な存在なのですが、ドラマではそのような面は描かれるのかどうかも気になるところです。
増える大学職員による発信
以上、始まってもいないドラマの感想を想像だけで述べてしまいました(ドラマスタートは4月)。大学職員や大学広報から見た大学がドラマになるような背景はやはり、それだけ大学に関する情報発信が増えていることと関係があるのではないかと推測します。
いまやソーシャルメディアの普及によって公式・非公式にかかわらず、組織だけでなく職員個人(さらに言えば教員や学生も)が内部情報も含めて発信する時代です。業界のインフルエンサーと呼ばれる職員も出てきています。
今回のドラマについてネットで検索すると、2020年11月26日に公開された武蔵野美術大学職員の手羽イチロウさんの記事がヒットします。手羽さんはこの方面の先駆者で、業界の有名人でもあります。また学校広報担当者らでつくるSNSグループでも、発表直後からこのドラマが話題となり、そこに全国紙の記者も加わってコメントをしていました。
ソーシャルメディアは、それまで大学担当記者と広報担当者を窓口に...