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大学広報ゼミナール

コロナ禍で利用広がる 「広報動画」活用の現状

谷ノ内 識(追手門学院大学)

コロナ禍で遠隔授業の全面導入を余儀なくされた大学にとって、動画は効果的なコミュニケーション手段として見直されました。動画は学生募集を目的とした入試広報、またそれ以外の大学広報、それぞれで活用されています。

ウィズコロナの今、もはや大学の広報活動において動画を導入していない大学はないのではないでしょうか。従来の対外的な情報発信手段としてだけでなく、新入生や在学生へのメッセージ、科目履修や各種オリエンテーションの説明などにも動画が活用されています。一方で実際にどの程度動画が活用されているか、その全容は知られてないように思います。

そこで今回は先行研究からの示唆をベースに追手門学院大学の事例も絡めながら、広報活動としての動画の活用(広報動画)を考えます。広報動画を考えるにあたっていくつか視点があると思います。「全国の大学でどの程度導入されているのか」「どのような動画が人気(再生回数が多い)なのか」「どのような内容を動画にしているのか」「広報動画の成果指標」などです。

コロナ禍で進む動画活用

静岡大学の研究グループは入試広報の視点から、全国の国公立大学における動画活用の実態と比較しつつ自大学の広報動画について分析をしています。兵庫県立大学の井関崇博准教授は、全国立大学86校、全公立大学93校、私立大学613校のうち、おおむね入試偏差値50以上の上位99校の総計278校を対象に、YouTube上に大学を代表する公式チャンネルを開設して2020年8月15~16日までに公開された今も稼働中の動画を調査しています。その分析結果は、2020年10月に開催された日本広報学会第26回研究発表大会で発表されました。

まず「全国の大学でどの程度導入されているか」です。井関准教授によると、2006年からYouTubeチャンネルの開設が始まり、2010年の時点では全体の13%にあたる大学が開設していました。2011年から急増し2014年には58%と半数を超え、2020年8月の時点では90%の大学に普及したということです。2016年以降新規開設数が減少していたところ、2020年は前年より倍増しており、これは新型コロナウイルスの影響が考えられるということです。

次に登録・公開している動画の数(図表1)です。250本を基準にそれを超える大学が21校あるのに対して20本にも満たない大学が81校あるということでした。また年間の制作本数でみても30本以上の動画をつくっている大学が21校であるのに対して、5本に満たない大学が98校あり、「積極的に動画を活用している大学は調査対象の1割程度」と分析しています。

図表1 大学YouTubeチャンネル掲載の動画数

注1)追手門学院大学の数値は筆者が加筆。
注2)京都教育大学の動画数には教材動画が含まれる。
注3)京都大学は公式チャンネル「Kyoto University」を対象。

出所/井関(2020)日本広報学会第26回研究発表全国大会発表資料

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