日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

メディア研究室訪問

厳しく熱い指導で本格的な社会調査スキルを伸ばす

聖心女子大学 現代教養学部 人間関係学科 小城英子 ゼミ

メディア研究などを行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回は聖心女子大学の小城英子ゼミです。

小城英子ゼミ。

DATA
設立 2006年
学生数 3年生13人、4年生13人
OB/OGの主な就職先 電通、ビデオリサーチ、インテージ、大日本印刷、帝国データバンク、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、ANA、JAL、朝日新聞

聖心女子大学 人間関係学科は、心理学、社会学、文化学の3分野があり、それぞれの視点から社会課題と人間のあり方を考察できる学生の育成を目的としている。同学科で社会心理学、特にマスコミュニケーションを専門とする小城英子准教授。ゼミでは社会調査活動をメインに、マスコミやSNSのコンテンツへの研究・発表を行っている。ゴールは4年次の卒業論文に設定している。

ゼミ自体は3年次からのスタートだが、ゼミが決まった2年次の春休みから卒論のテーマ思案に入り、文献分析などを行う。3年の前期は文献研究のプレゼンを繰り返していく。後期は本格的に調査活動をスタート。4年次4月の本調査に向けて質問紙の作成、予備調査などを行っていく。「基本、ゼミの時間はプレゼンとディスカッションをする場です。授業時間外も個人指導の場を設けており、研究のサポートや指導はそこで行っています」。

論文1000本ノック!

「体育会系で厳しい」という小城ゼミ室の活動。夏季休暇期間には「1000本ノック」と言われる論文の書き方トレーニングが課題として出される。「あるテーマについての論文の提出、添削、再提出を繰り返し行います。引用の書き方、構成の立て方、言い回しなど、とにかく厳しくチェックして、多いときは8回ほどこのやり取りを繰り返し行い、論文の基本を実践の中で学んでもらいます。スパルタなことは学内でも有名なので、向上心があり、何事にも積極的な学生が多いです」。

また夏季休暇中は3、4年生合同の合宿を実施する。「4年生の発表は3年生のロールモデルになります。4年生もフィードバックする中で自分の研究にも活かせる気づきが得られるなど、学生同士で成長し合える場になっていると思います」。

3、4年生合同夏合宿。3年生のプレゼンに対し4年生がアドバイス。

一流レベルを体験させる

また、同学科3年次にはゼミとは別に「社会調査実習」という授業もあり、文献研究からデータ分析まで、社会調査のスキルを身につけることを目的としている。3~4人のグループ活動で、10月の文化祭にポスター形式で研究報告を行う。取り扱うテーマは「ファン心理」。過去『100日後に死ぬワニ』ヒット要因の検討や男性アイドルの日韓比較、消費者行動に効果的なキャッチコピー、ヒットテレビドラマの魅力などを取り上げた。

「基礎的なことはこの活動を通じて学んでもらいます。ゼミと並行して研究を進めるのは学生にとっても負担が大きいですが、この活動を通して一流のレベルを学生に体験してもらいたいと思っています。最高レベルがどのようなものなのか、どのくらいの労力が必要なのかを体感してもらうことで、これから社会に出たときの価値判断や優先順位づけに役立つからです」。本格的な調査結果はマーケティング業界関係者にも高く評価されており、直接連絡がくることも多々あるという。

「学生には今の状態に満足せず常に向上心をもってほしい」と小城准教授。「一方でいきなりハードルを上げてしまうとあきらめてしまう。そこを教員側がステップを細かく刻んで提示してあげることで、成功体験を積み上げて成長してもらいたい」と語った。

文化祭「聖心祭」ではポスター形式で研究成果を報告。


ポジティブ、ネガティブ両方の視点で社会を見つめる

元々同大学出身である小城准教授。大学2年生の時に「認知的不協和理論」を学んだことで研究にのめりこんでいった。「人間は既存の態度と矛盾する現実にぶつかった時、認知のほうを変容して自分を肯定しようとするのです。こういった人間の行動を、心理的なメカニズムから説明することにおもしろさを感じました」。

今、学生たちとのコミュニケーションの中で、研究範囲も広がっているという。

「学生の興味を持つものはとても面白いです。SNSや現代のエンタメ事情など私の知らない社会を教えてもらっています。今は『ファン心理』についてを主にテーマとしていますが、好きなものというポジティブな思考のなかにも、アイドルタレントのストーカー被害問題など、ネガティブな側面も含め、さらに深掘りしていきたいと思っています」。

小城英子(こしろ・えいこ)准教授

聖心女子大学文学部歴史社会学科人間関係専攻(現:現代教養学部人間関係学科)卒業。関西大学大学院修了。博士(社会学)。2006年から現職。専門は社会心理学。現在の関心は、ファン心理研究、不思議現象信奉研究など。

メディア研究室訪問 の記事一覧

厳しく熱い指導で本格的な社会調査スキルを伸ばす(この記事です)
講義では伝えきれない現実 現場にこだわる被災地取材
700人以上のメディア関係者から多様な視点とセンスを磨く
企画・制作・編集を自ら担う 月1本の番組制作で人間力育成
番組制作はコミュニケーション 人との関係を学ぶゼミ

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する