広報業界を30年以上見続けてきた作家・ジャーナリストが時事ニュースの中から特に注目すべき事案をピックアップ。その本質と求められる広報対応について解説する。
これほど短期間に世界中の子どもだけでなく大人まで熱狂させた商品はかつてなかった。今年の夏は、日本中がポケモン探しに夢中。「ポケモンGO」が世界のゲーム史を塗り替えたのだ。いまや説明不要かもしれないが、「ポケモンGO」は、任天堂が32%を出資している「ポケモン」とグーグルから独立したベンチャー企業「ナイアンティック」(Niantic)が共同開発したスマホ向けの画期的ゲームアプリである。
7月6日に米国、豪州、ニュージーランドで配信が開始されたのを皮切りに、英国(14日)、欧州26カ国(16日)と続き、22日に日本で配信されるころには、すでに世界的大フィーバーを巻き起こしていたのだから途方もない“お化け商品”である。米国の配信開始からわずか1カ月で、全世界でのダウンロードは1億を超え、スマホ向けゲームの歴代トップに躍り出た。
当初、日本人はメディアの報道を通じて「ポケモンGOが海の向こうで凄いことになっている」と知り、「日本でも早く配信してほしい」という声が高まったが、任天堂はダンマリを決め込んでいた。その様子は、さながら武田信玄の旗印「風林火山」だ。超短期間で世界を席巻した「ポケモンGO」が「疾(はや)きこと風の如く」「侵掠(しんりゃく)すること火の如く」なのに対し、任天堂は「徐しずかなること林の如く」「動かざること山の如し」だったのである。そんな任天堂の株価が動意づいたのは、米国での配信開始から2日後の8日である。
App Storeで1位になったのが好感され、前日より1335円も上げて1万6 260円で引けたが、それは序章に過ぎず、証券取引所の連休明けの11日にはストップ高(値幅制限)を交え、終値は10円安の2万260円。前日比3990円の値上がりで年初来高値を更新した。弾みがついた同社株は翌日も2580円高となり、さすがに翌々日は1010円安の2万1830円と下押したものの、そこからはもっと凄かった。
ポケモングッズを販売するタカラトミーほか「ポケモンGO 関連株」も軒並み高騰、“ポケモノミクス”という新語まで登場した14日は2万5300円、2万7780円(15日)、3連休を挟んで19日には3万177 0円(この日の高値は3万2700円で、年初来高値を記録)。同社の年初来安値は6月28日の1万3360円なので、20日ほどで3倍近い暴騰だ。
社内メール流出で発表延期
ポケモンGOと提携した最初の日本企業は ...