広報業界を30年以上見続けてきた作家・ジャーナリストが時事ニュースの中から特に注目すべき事案をピックアップ。事件の本質と求められる広報対応について解説する。
2015年から続くロッテのお家騒動は、創業者の重光武雄氏の出身国である韓国メディアも巻き込み、さらに報道が過熱している。7月7日には不正資金疑惑で創業者の長女が逮捕され、同社への風当たりは一層厳しいものに。
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企業イメージ下落、その時広報は?
「お口の恋人」が泣いている。ロッテのこのキャッチフレーズは、企業名想起率で「コーヒーギフトはAGF」「あなたと、コンビに、ファミリーマート」などを抑え、堂々の14年連続でトップ(日経BPコンサルティング調べ/2015年10月発表)なのだが、いかんせん、同社は、ロッテファンや株主も含めた消費者不在の「お家騒動」を繰り返している。
大塚家具問題との共通項
お家騒動といえば、2015年は大塚家具が有名になったが、そちらが「経営方針をめぐる父と娘の覇権争い」だったのに対し、こちらは「父親の跡目をめぐる兄と弟の覇権争い」である。両者に共通する「危機管理面から見たデメリット」は、
(1)メディアの好餌となるスキャンダル(醜聞)であるということ、
(2)コーポレートガバナンス(企業統治)への疑問、
(3)企業イメージの下落、
(4)企業価値の毀損(株価への影響)、
(5)役員秘書・広報担当・IR 担当泣かせであるということ
などだ。ロッテは加えて、(系列会社間取引での)裏金疑惑で韓国本社が検察の捜査を受け、弱り目にたたり目状態にある。
総会密集日を狙う広報戦術
お家騒動では、「定時株主総会」が雌雄を決する重要な舞台となる。上場企業の大塚家具もそうだったし、非上場企業のロッテもそうだ。3月期決算の東証一部上場企業の株主総会は、6月に集中している。6月に株主総会を開催した企業は、JPX日本取引所グループ調べによると1447社(うち7社は3月31日以外の決算)で …