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リスク広報最前線

野球賭博問題の広報を検証 組織内不祥事の対応方法とは?

浅見隆行(弁護士)

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

野球ファンはもちろん、社会的に大きな衝撃を与えた「巨人野球賭博問題」。次々に選手の関与が明らかになったほか、賭博まがいの慣習も報じられ、長く愛されてきたプロ野球の信用性そのものを失墜する出来事となった。

読売巨人軍(以下「巨人」)の投手が野球賭博に関与していたことが2016年3月8日に新たに判明しました。2015年10月に巨人の3人の投手による野球賭博への関与が発覚した後に内部調査が行われた際には虚偽の説明をしていたものの、週刊文春の取材によって当該投手の関与が明らかになったのです。

広報の対象・相手を考える

新たに判明した野球賭博の件では、3月9日に当該選手が1人だけで巨人の久保博社長とは別に謝罪会見を行いました。法律上は、「読売巨人軍」という株式会社と選手契約を締結している個人事業主(=選手)が賭博をしていた問題だと整理できます。そのため、会社の代表取締役社長が、個人事業主である選手による会見と別に会見を開くことは、法的には間違っているわけではありません。

しかし、世の中では、特にプロ野球ファンは、会社と個人事業主という法的な関係では捉えていません。あくまで「巨人というプロ野球の組織内で野球賭博が行われていた」と見ています。

プロ野球チームは、ファンに支えられている事業会社です。謝罪会見を行う際には、ファンの目にどう映るかを考えなければなりません。そのため、法律論だけで形式的に対応するのではなく、世の中からどう見られているかを考えて、謝罪会見の方法や出席者を決するべきでした。

巨人の役員は、取締役オーナー、取締役オーナー代行、代表取締役社長の順で序列があるようです。だとすれば、該当選手だけが単独で会見するのではなく、取締役オーナー、取締役オーナー代行、代表取締役社長が選手と一緒に謝罪会見に出席した方が良かったのです。

まして、個人事業主とはいえ、当該選手は、巨人のユニフォームを着て選手として活動しています。そうであるのに、選手だけが代表取締役社長とは別に会見したのでは、選手一人に責任を負わせようとしているのではないかとファンを誤解させてしまいます。これでは、ファンが離れてしまいます。

社内で重大な不祥事が発生した際、その不祥事を会社がどれだけ深刻に受けとめているかは、記者会見の出席者によってもメッセージとして伝わることを忘れないでほしいと思います。

不祥事対応ではありませんが ...

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