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広報担当者のための企画書のつくり方入門

新時代の広報手法 クラウドファンディングを活用した広報企画書を書きたい

片岡英彦氏(東京片岡英彦事務所 )

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

支援者とのコミュニケーションを通じて魅力を伝える

クラウドファンディングは、単に資金を集める手段を超え、企業がブランド認知度を高め、ターゲットオーディエンスとの直接的な関係を築くための新たな機会へと進化しつつある。広報の企画書にクラウドファンディングを効果的に組み込むことがますます重要となり、クラウドファンディングの概念を深く理解し、広報・PR戦略においてその価値を最大限に活かすことが広報担当者にも求められつつある。具体的には、支援者とのコミュニケーション戦略を策定し、報酬(リワード)の提供やストーリーテリングを通じてブランドの魅力を伝える方法が重要になる。

 

今回は、この新時代の広報手法を広報の企画書にどのように取り入れ、実践するかについて考えていく。プロジェクトの特色を際立たせ、支援者の心を捉える戦略を構築することが鍵となる。

視点1
クラウドファンディングの広報への応用

クラウドファンディングの基本概念

クラウドファンディングは、インターネットを利用して多くの人から小口の資金を集める手法である。リワード型、寄付型、株式投資型、貸付型など、さまざまな形態で展開され、プロジェクトやアイデアの実現に重要な役割を果たしている。特に広報・PR分野では新製品やサービスを市場に紹介し、ブランド認知度を高める絶好の機会として機能する。資金調達を超える価値を持ち、企業はクラウドファンディングキャンペーンを通じてターゲットオーディエンスと直接関係を築き、強力なコミュニティを構築することも可能となった。また、支援者からの直接的なフィードバックを活用し、製品開発やマーケティング戦略を調整することにも活用できる。

大学で教鞭を執る筆者としては、卒業制作の企画書を目にする中で、クラウドファンディングでの資金獲得と広報展開を前提とした企画の増加を実感している。また、資金獲得と同時に広報活動の一環としてクラウドファンディングを活用したいとのベンチャー企業などからの相談を受ける機会も増えた。これは、クラウドファンディングが新しい形の広報・PR手法として認識され、学生や若い起業家による革新的なアプローチとして利用されていることを示している。クラウドファンディングは、今後も多くの分野で重要な役割を果たすものと考える。

図1 クラウドファンディングの主要形態

リワード型クラウドファンディング

支援者は、金銭的な支援の見返りに製品やサービスなどの報酬を受け取る(例:新製品の先行予約、限定版商品、プロジェクトに関連する体験やサービス)

寄付型クラウドファンディング

支援者は、報酬を求めずに特定のプロジェクトや団体に対して金銭を寄付する(例:非営利団体の支援、社会的・環境的なプロジェクトへの寄付)/p>

株式投資型クラウドファンディング

投資者は、企業やプロジェクトに資金を提供し、株式や将来の収益の一部を得る(例:スタートアップ企業への投資、成長段階のビジネスへの出資)

貸付型クラウドファンディング

個人やビジネスに対して貸付を行い、後に金利を含む返済を受け取る(例:個人や中小企業への小規模融資、金銭的リターンを目的とした貸付)

近年のクラウドファンディングの利用動向

クラウドファンディングは、スタートアップ企業、アーティスト、非営利団体など多岐にわたる分野で利用されている。新しい技術や製品、社会的プロジェクトへの関心が高まる中で、利用者数も増加している。これは、クラウドファンディングが資金調達の手段を超え、強力なコミュニケーションツールとして機能していることを示している。

クラウドファンディング大手「CAMPFIRE」の統計(2019年1月~2023年9月)によれば、出資者としての支援経験のある事業者の目標達成率は60%弱。既存のファンの多いカテゴリーやリターン単価の高いカテゴリーの支援総額が多くなる傾向にあることが分かっている。

事例から学ぶクラウドファンディングのメリット

これまでに成功を収めた事例を研究すると、クラウドファンディングが広報・PR戦略とどのように結びついているかや、効果的なストーリーテリング、コミュニティビルディング、メディア戦略といった要素を学ぶことができる。

   

例えば世古林業は、伊勢御山杉の端材を活用した御朱印帳を商品化し、クラウドファンディングでブランディングに成功した。特定のニーズを持つ市場に訴求した製品であり、伊勢御山杉の「香り」を特徴とする御朱印帳は、製品の背景にあるストーリーや文化的意義を伝えるアイテムとして位置づけられる。クラウドファンディングにおける「物語の重要性」が分かる事例だ。

 

また和歌山県のスタートアップ企業であるglafitは、折り畳み式電動ハイブリッドバイク「glafit」のプロジェクトでクラウドファンディングを...

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