企業におけるインナーコミュニケーション施策のひとつとして、リンクイベントプロデュースでは企業の9つの節目の活用を提案している。周年、年次総会、社長交代といった節目を好機とし、組織を活性化させるポイントとは。
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リンクイベントプロデュース 代表取締役社長 八重樫 徹氏(やえがし・とおる)
丸紅を経て、2000年リンクアンドモチベーションに入社。以後一貫して企業の組織風土変革、ブランド強化のコンサルタント、および場のファシリテーターとして従事。提供するイベントは年間で2000件を超える。
今多くのメディアで、企業の社内施策が取り上げられています。実際お客さまからも、社員を集めた運動会、社員旅行、誕生会などユニークな社内イベントを実施しているという声を聞く機会が多くなってきました。
近年、市場の激変に伴う企業の統廃合やリストラが珍しくない中、企業と個人の関係が「相互拘束関係」からお互いが選び選ばれる「相互選択関係」へ大きく変化したと言われています。それに伴い、社員から選ばれない企業は淘汰される時代に入りました。昨今見られる施策は、ただ社員の懇親を図るためではなく、社員の多様化するモチベーションを適切に「束ね」、市場変化に対して前向きに進む組織づくりの役割を担っているのです。
一方で、世の中で取り上げられる社内施策は様々な意図で実行されますが、その経緯よりも施策の中身に注目が集まりがちです。自社へ同じように導入することに対し戸惑う広報・経営企画部門の方々は多いようです。どんなに素晴らしい施策だったとしても、その施策と企業文化とのストーリーとしての一貫性がなければ、実行しても意味がないのではという声も聞かれます。
社内を活性化させるコツ 「9つの節目」とは?
とはいえ、社員のやる気を引き出し、社内に経営の意図を浸透させる土壌をつくっていくことがミッションである広報、経営企画部門の皆さんが、インナーコミュニケーションに対するトップの意思表明をただ待っているだけでは会社は良い方向に進みません。そこで当社が企業に提案しているのが、企業の節目「ライフイベント」を活用し、企業を改めて見直す機会を創るということです。人に入学、結婚、出産といった節目があるように、実は企業にも様々な「節目」があります。それらは大きく9種類に分けられます[図1]。
「周年」「社員総会」「新卒採用」「中期経営計画策定」といった円環的に訪れるものもあれば、「事業継承」「分社化」「上場」など突発的に訪れるものもあります。ともすればただなんとなく過ぎていくことですが、会社としては変化が求められる時期であり、未来に向けて組織のギアを入れ直す契機として最適なタイミングなのです。
例えば5年、10年ごとに訪れる「周年」。感謝やお祝いのための外部に向けた施策もできますが、創業から今まで、そして未来を見据え、長期視点で組織を捉えるチャンスとすることも可能です。日常ではつい後回しになってしまうことにあえて計画的に取り組むことができるのです。
毎年行っている「年次総会」などもあります。多くの企業では社員のモチベーション向上を目的に成績優秀者への「表彰」を行いますが、場の大半を占める「受賞できなかった人」に受賞者というロールモデルを通じて、会社が示したい方向性を組み込んで理解してもらったほうが次の行動につながりやすく、本来の目的には合致します。
実は「ライフイベント」はどの企業にも数多くあるもので、それを「節目」として活用するかしないかは、長期かつ全社視点での仕事をしている広報、経営企画部門次第なのです。
「LINK」という観点で施策の目的の整理を
これらのライフイベントを有効に活用するには、活動のコンセプトやメッセージを定める必要があります。その設定のヒントとなるのが、「LINK」の視点です[図2]。LINKとは、「時間(過去・未来)」「空間(社内・社外)」という2つの軸から成り立っています。ライフイベントの特徴と会社の状況を掛けあわせた上で、一番社員に届きやすいメッセージを導きます。
例えば先ほどご紹介した周年事業は、創業からこれまで、そして未来を通常より長期視点で捉えることができる機会です。その特徴を踏まえた上で、改めて創業から今・ここに至るまで変わらず継承していきたい「自社のDNA」や「らしさ」とは何か(Keep up)。「未来」に向けて変革したいことは何か(Nextage)。社員の視野を広げていくためにも、「顧客」や「市場」から期待されることは何か(Linkage)。また、今の「社員」が一体となるために必要なことは何か(Integration)。どこに重点を置くのかによってメッセージは大きく変わり、かつ取り組む施策も変わってくるはずです。
社内イベントをただの一過性のものにしないためにも、時間軸、空間軸から発信するメッセージを検証し、組織が動くきっかけにすることが重要なのです。
「体験・体感・対話」による有効な「場」づくりを
繰り返しになりますが、インナーコミュニケーションは、社員のテンションを一時的に上げることではなく、経営の向かう方向に対するモチベーションを引き出すことに目的があります。このような抽象的、かつ曖昧なものへのモチベーションは、文章だけでは伝わりきれない温度感や行間も伝わることで初めて引き出されます。そのためにはともに「体験・体感・対話」できるリアルな「場」を持つことが最も有効な手段のひとつといえます。
広報や経営企画の部門が様々な節目を活用し意味ある「場」を生み出し、企業ブランディングの最大のスポークスパーソンである社員のモチベーションを束ね、市場変化にも適応できる「筋肉質な組織づくり」を進められるかが企業成長の命運を握っているといえるでしょう。そのためにもぜひ、今回ご紹介した「企業のライフイベント」という9つの選択肢の活用と、社員に自社の方向性を体感させる「場づくり」にチャレンジしてほしいと思います。
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