役員が自ら起こした問題で辞任へ ガバナンスが機能していることを示すには?
2024年10月28日、オリンパスのシュテファン・カウフマン取締役代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)が辞任しました。違法薬物を購入していたと同社に通報があったことがきっかけです。なお、カウフマン氏は、11月27日に麻薬特例法違反で起訴されています。今回は、このケースを題材に、企業の役員が起こした問題について責任を問う場面での危機管理広報について解説します。
リスク広報最前線
近年さらに複雑化する企業リスクに、広報はどう立ち向かうべきか。企業のリスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新の企業リスク事例を踏まえて解説する。
老舗文具メーカーのお家騒動 メディアを巻き込む展開に
100年以上の歴史を持つ、老舗文具メーカーであるセーラー万年筆。12月12日に中島義雄社長の解任を発表後、新社長側との間で大規模な「正当性」アピール合戦が勃発。メディアを巻き込む形で騒動は拡大した。
写真提供:Shutterstock
2015年12月12日にセーラー万年筆が、当時の社長(以下「前社長」)を代表取締役から解職する取締役会決議をしたところ、前社長は「決議は無効」との理由で「役員の地位を仮に定める仮処分」を裁判所に申し立てました。12月24日に前社長が解職を受け入れ、仮処分の申し立てを取り下げることで和解が成立しました。
解職から和解までの13日間、新社長と前社長の双方がメディアを用い、自らの正当性をアピール。今回はこの広報合戦について解説していきたいと思います。
前社長は解職決議の当日に「決議は無効」と主張し、新社長側は14日、「代表取締役の異動の経緯に関するご説明」を開示。これに対し、前社長は、週刊東洋経済の取材に答える形で18日に反論を主張しました。
新社長側が前社長を任期途中に解職する手続きと新社長を選任する手続きの、いずれをも法的に瑕疵(かし)なく行うことは当然必須だといえます。手続きが適正に行われなければ …