記者と広報は、なぜすれ違う?第一線で活躍するメディアの記者に本音で語ってもらいました。
大手メディア 経済部 記者 Oさん(男性)業界紙から某大手メディアに転職。地方勤務時代からその頭角を現し、経済部に異動後も主要クラブで活躍した。忙しい毎日を送っているが、いつか田舎でのんびり「スロー記者ライフ」を送りたいと夢見ている。 |
記者として長く企業取材をする中で気づいたのだが、広報対応に慣れている企業とそうでない企業の「残念な対応」には大きなギャップがある。読者には様々な規模・業種の企業広報の方がおられると思う。ただ、複数の筆者によるこの連載を通じて、「慣れない企業の残念対応」はかなり目にしてきているように思う。そのため、今回は主に広報に慣れているはずの大企業や上場企業の残念な対応を見ながら、今後の広報対応の材料にしていただきたい。
メディアを“選別する”大手広報
記者や取材対応に慣れている大企業や上場企業にありがちな残念対応は、慣れているがゆえに、あるいは大企業であるがゆえに傲慢になったり、極端にメディアを選別したりすることだ。前者については筆者も少なからず経験がある。ある旧財閥系企業がメガソーラー事業に初めて乗り出し、間もなく工事に着手するというリリースを出した時のこと。当時は東日本大震災から1年半余り経ったころで、太陽光発電などクリーンエネルギーへの注目度が今よりも高かった。経済部長や経済部デスク、直属の上司である記者クラブのキャップからも「メガソーラーや風力発電などにまつわる企業リリースは積極的に記事にするように」と指示が出ていた。そのため私はリリースをざっと眺めて、記事化にあたって必要になると思われるが、リリースに載っていない情報に絞って電話で聞くことにした。
特にリリースに記載してあるメガソーラーの電力の出力量が、一般家庭が使用する電力量の何世帯分に相当するのかを確認する必要があった。メガソーラー事業の規模感を一般の読者に分かりやすく伝えるため、私がいた会社だけでなく、どの新聞社の記事でも同様の表現を必ず載せていたためだ。ところが若い広報担当者は質問したそばから「はっ?そんな情報、必要ありますかね?」と不機嫌そうに答えた。私は「分かりやすく伝える必要がある」と説明して、担当者は渋々ながら了承し、40分後くらいに回答してくれた。
大企業にお勤めで「自分たちのリリースに不足はない」と思っていたのに、私が指摘したので不機嫌になったのだろうか。大企業の広報パーソンであるにもかかわらず自分たちが発表するリリースに似た事例を新聞で確認すらしていないのは記者からすると驕りにしか見えない。
結局、一連の経過を直属の上司であるキャップに報告し「変な広報もいますね」と伝えると、キャップは「必要な情報かどうかを決めるのは広報じゃなくて記者だ。そんなことも分からない広報がいる企業リリースを記事にする必要はない」と激怒。私が書いた原稿はボツになってしまった ...