機関投資家だけでなく、"ファン株主"を得たいという企業が増えています。本連載では、個人投資家向けに株式の評論を行う櫻井英明氏が、マーケットで選ばれるIRコミュニケーションの秘訣を読み解きます。
7期ぶりの復配を控え、個人投資家には「挫折経験後、再び成長・拡大」の路線を熱心に語る。
NTTが年間50回以上の個人投資家向け説明会を開催するなどIR促進の時代になってきた。IR担当者にとっては個人投資家との対話はなかなか慣れないシロモノかも知れない。一般的な個人投資家の思考法に習熟するには、個人投資家の投資の原理原則を知ることが必要だろう。それは、(1)業績の良い会社か悪い会社か。(2)その企業の未来展望が明確かどうか。(3)社会の役に立っているかどうか。この3点が大前提となっている。
何が言いたいかというと、「IR担当者の役割は企業の方向性を明確にすること、しかも極めて優しい言葉で」ということ。あれこれと羅列してもそれは個人投資家にはなかなか届きにくいもの。せいぜい3つくらいにポイントを絞って訴求することが必要になってくる。特に「○○といえば△△社」とか「あの社長のお決まりのフレーズ」という記憶が醸成されればIRの仕事はひとつ合格だろう。
その点で徹底しているのがヤマノホールディングス(7571)。創立者の山野愛子さんは「美道五原則」すなわち「髪・顔・装い・精神美・健康美」を唱え美容技術と美容師の社会的地位の向上に尽力。その精神は今も受け継がれている。同社はこの「美道五原則」に基づいて、美容、和装、アパレル、スポーツ、宝飾などの事業を展開している。積極的なM&Aを行っているが「美道五原則」からは逸脱していない。ここはわかりやすい。