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なぜ、あの会社の株は選ばれるのか?

中小型銘柄のIR原則は「株価に踊らず、慌てず、そして決して諦めず」

櫻井英明(ストックウェザー「兜町カタリスト」編集長)

機関投資家だけでなく、“ファン株主”を得たいという企業が増えています。本連載では、個人投資家向けに株式の評論を行う櫻井英明氏が、マーケットで選ばれるIRコミュニケーションの秘訣を読み解きます。

株主通信(右)のほか、飲食のフランチャイズが中核事業ながら食材などさまざまな優待メニューを用意する。

IRの世界でしばしば見聞きするのが「株主数が増加した」という担当者の声。学問的にIR活動を捉えれば評価基準は株価と株主数なのだろうから、仕方がないことかも知れない。しかし、どんなに努力しても思ったように株主数は増えないし、大した努力をしなくても株主数が増えることもある。決してIR担当が頑張ったからとはならないはずなのだが、評価の基準のひとつなので株主数の増加を上司に訴えることになるのかもしれない。もちろん株主数が多いに越したことはない。知名度の向上の表れになるだろうし、なによりファンが増加していることにもつながる。ただ考えておきたいのは、株価が上昇すれば株主数は増えるし、その後下落すればさらに株主数は増える。大切なのは数ではなくて質だということ。ここを間違えてはいけないだろう。

株価が急騰すれば嬉しいのがIR担当者。しかしその後の急落に見舞われると異常に不安になるのもIR担当者。以前あるIR担当者から相談され、次のように返答したことがある。「外野の人間ながらひとつだけいえるのは『何があってもでーんと構えて誠実に投資家に対応する』。これだけです。株価は投資家の欲望と夢の産物。企業の未来は株価で決まるわけではなく、業績の動向で決まるものです。錯覚している投資家は結構多いでしょうが、きちんと今目の前にある業務を死に物狂いで推進していくことこそ本来望まれるものでしょう。『踊らず、騒がず、慌てず、そして決して諦めず』。難しいことですが、投資家ばかりでなくIR担当者にも望まれるのではないでしょうか」。

ある夕刊紙で今年の2月に紹介したのがアスラポート・ダイニング(3069・JQ)。「『谷間のゆり』のようにひっそりとしているものの着実に咲き始めた銘柄。社名と業態はなかなか一致しないが、『とり鉄』や『牛角』、『とりでん』などのフランチャイズが中核。テイクアウトメニューなども採用し、ここまでの静かな路線から拡大基調に入ってきた印象」と書いた。同社の綿貫涼子さんは積極的、戦闘的IR担当。昨年末に頂戴したメールは「積極的なIR活動の必要性とその期待される効果について経営陣に訴えた結果、『取り組もう』ということになりました。来年に向けての市場の盛り上がりの予感、新興市場への注目度のアップなど『ここでやらなければ、いつ!』と力説した次第です」。こういう会社の今年の株価の展開はというと、昨年大納会は188円。その後5月1日に398円の高値を付けた。市場全体の上昇を享受したということもあろう。しかし必ずしも全体相場に連動しない中小型銘柄の上昇はたぶん孤軍奮闘から社長のメディア出演など少しずつ社内を巻き込み始めたIR作戦の効果だろう。

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