日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

小さなお店を流行らせる広報術

六本木の再開発地区への出店は、もうお止めなさい

吉野信吾(プロデューサー)

六本木ヒルズ、東京ミッドタウンに続き、泉ガーデンから道を挟んだ六本木3丁目東地区、旧六本木プリンス、旧IBM跡地に、大手不動産会社が業務、住宅、商業の2.7ヘクタール、延べ床6万坪の開発をおこなっています。そして、今度はついに六本木7丁目の高級スーパー明治屋のある辺りから、夜の繁華街の聖地、六本木交差点まで、さらに、裏側の旧TSK・CCCターミナルビル跡地、かつてのディスコ、ヴェルファーレ跡地あたりまで、ぜーんぶ新たな業務、住宅、商業施設が建つようです。ちなみに、1976年に建った六本木交差点から1~2分のホテル・アイビスは、昨年末にすでに閉店しています。

実はかなり以前から六本木では13もの再開発プロジェクトが進行していましたが、本当の意味での中心部、六本木交差点からは若干それていました。が、しかし、今度はついに交差点までその再開発の手が及ぶことになるわけですが、もはや以前の六本木という呼び名から想像できた不夜城六本木の活気や様相が、過去の遺物、語り継がれる昔話になってしまうのか、そう思うと複雑な気持になるのは私だけでしょうか。

ふり返って六本木

良くも悪くも六本木は夜の街でした。昼間歩けば昨夜のゴミが裏通りに積まれ、カラスや野良猫が食い荒らした残飯が道に散乱している、そんな昼の顔でした。いまで言うお洒落なカフェやレストランなどはほとんどなく、ファッションも青山や原宿の足元には及ばない。しかし夜ともなれば、芸能関係、音楽関係、役者、広告関係、政治家、財界人、不動産関係......といった人達が不夜城である六本木へと足を向け、そこにはありとあらゆる種類の飲食業態が存在しました。それは新宿、赤坂、銀座とも違う六本木独自の匂いを放っていたのでした。昔から外国人も多く、その国際性も他の街に類を見ない一種の華やかさが備わっていましたが、犯罪もそれにともなって国際的というのが六本木。

しかし、その危険性と抱き合わせの「何かあるんじゃないか」「今夜は予期せぬことが......」といった、根拠なき期待感がいやがうえにも盛り上がる、そんな雰囲気が街に充満していたのでした。それは、さほど広くない六本木という密集した地域に、先に記したような多種多様な職業の人たちと共に、文化人や作家、アーティストといわれる人たちが、小さな店を介して知り合える、といった意外性と、文化サロン的な要素を含んだ店が存在していたからです。

あと70%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

小さなお店を流行らせる広報術 の記事一覧

六本木の再開発地区への出店は、もうお止めなさい(この記事です)
埼玉県の小さなクリニックにテレビ取材が殺到した理由
「あやしげ」「危険」「やばい」の担い手不足が残念
麦焼酎いいちこの『下町のナポレオン』が今でもなじみ深い理由
「和食」の無形文化遺産登録を考える
アマゾンの本ランキング、タイトルから読み解く「深堀り」「絞り込み」志向

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する