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小さなお店を流行らせる広報術

「和食」の無形文化遺産登録を考える

吉野信吾(プロデューサー)

「和食」が今年の12月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されるといいます。遺跡や自然が対象の「世界遺産」、文書や絵画が対象の「世界記憶遺産」、そして芸能や祭り、伝統工芸などが対象となる「無形文化遺産」は、ユネスコの「三大遺産事業」で、日本では歌舞伎を含む21がこの「無形文化遺産」にすでに登録されています。

食の「無形文化遺産」はフランス、スペインやイタリアなどの地中海、メキシコの伝統料理、トルコのケシケシ(麦粥)がすでに認定登録されていて、日本の和食はそれに続く5番目の登録となるわけです。認定に至る要素としては、個別の料理ではなく、日本食(和食)が文化として評価されたということです。和食文化は、自然を尊重する日本人の精神性が現れた社会習慣であり、貴重な世界的な文化遺産。その根底には、四季や地理的多様性による山海の豊富な食材、また自然の美しさを表現した盛り付け、田植えや正月といった行事との関係性が認定に至った要素だとしています。

JETRO(日本貿易振興機構)の調べによると、海外の和食店は2006年の2万4000店から倍増し、現在は5万5000店。内訳はアジアで2万7000店、北米1万7000店、欧州5500店、中南米2900店......と続きます。今後さらに増加するでしょう。

文化遺産認定で予想されること

すでに「なんちゃって和食」と呼ばれている「イチゴ入り寿司」や「チョコレートがけ寿司」といった世界に広がる奇妙奇天烈な和食が、無形文化遺産に認定されたことによって改まるのかと言えば、認定されることで弾みがついて逆に加速するかもしれません。そもそも「和食」というものを明確に規定するガイドラインが存在しません。平安時代から受け継がれてきた「和食」の伝統的様式の「一汁三菜」という、御飯と汁物、おかずの組み合わせこそが本当の和食、日本料理かといえば、基本であったとしても必ずしも絶対「一汁三菜」ではないはずです。鮨は?蕎麦は?......となるわけです。和食の無形文化遺産認定のために大きく活動したのは、京都の伝統的日本料理店の方々といいますから、伝統的様式を踏襲したものが「和食」ということにはなるでしょう。

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