雇用やキャリアなどの領域で活躍する評論家の常見陽平氏はかつて、トヨタとリクルートの合弁会社の広報担当者を務めていた。取材する側、される側を知る常見氏から、広報担当者に辛口のエールをもらった。

広報時代の写真。手にしているのは、同社への取材をもとに書かれた書籍「OJTでいこう!」。友人で現ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が執筆した。
握手しながら殴り合う
情報が劣化していると感じます。中途半端な取材で書かれたネットニュースがそこそこ有名なサイトに転載され、またそれを、そこそこ知られた人がソーシャルメディアで拡散し広がっていく。そんな現象の背景には、メディアや広報など、情報発信に関わるすべての人の共犯関係があるのではないでしょうか。
記者と広報は戦いです。片方の手で握手して、もう片方で殴り合う。でも今は、ずっと握手しているか、または殴り合いばかりしているか、両極端です。メディアも雑になったと感じます。裏の取り方が弱く、かつての強面の記者は見なくなりました。一方で、ネットニュースなどがぬるいニュースを流し、取り上げられて喜ぶ広報。本当にメディアのことが、会社のことが好きなのかと感じることも少なくありません。
僕は会社員時代に2年間、広報担当をしていたことがあります。トヨタ自動車とリクルートグループが合弁で2002年に設立したオージェイティー(OJT)・ソリューションズ(名古屋市)で、リクルートから出向し立ち上げから関わりました。トヨタのモノづくり現場で活躍した管理監督者を顧客に送り込み、一緒に改善プロジェクトに取り組むサービスを提供する会社です。当初から引き合いが多く、初年度から黒字を出すなど注目を集めました。