世界遺産論を専門とする稲葉信子筑波大学教授は、世界遺産になるということの意義を地元行政や企業が正しく認識し、その保全・観光・イメージ戦略においてベストモデルをつくってほしいと話す。「世界遺産になったことを記念して、果たしてゆるキャラでいいのか。そうやって自問することにこそ意義があります」。
世界遺産に登録するためのプロセスは、広域にわたる地域の「ものがたり」の掘り起こしでもある。富士山は、「山」である以外にどのような価値があるのか、その歴史・文化的背景が価値として認められ、登録に至った。25の構成資産を一つひとつの独立した観光資源とみるのではなく、大きな「ものがたり」を意識したい。石見銀山は、銀山そのものではなく、鉱山街や温泉街、積出港を含めて遺産とされた。
ものがたりを知ることで、地域の人はプライドを持つことができる。「今は、両県や各市町村、そしてJRや富士急行といった地元企業がバラバラに動いている。広域にわたる公社をつくってまちづくりに臨む世界の事例なども参照しながら、これぞベストモデルというまちづくりにプライドを持って取り組んで欲しいと思っています」。