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知的財産を巡る紛争に、広報はどう対応すべきか

「正露丸事件」から学ぶ、商標の識別力低下を防ぐポイント

TED知的財産法研究会

広報活動の中で常に隣り合わせとなる法律が「知的財産」にまつわるもの。はっと気付いた時、「時すでに遅し」とならないよう、日頃からしっかりとポイントを押さえておく必要がある。今回は、消費者に長く親しまれた商標が「普通名称」となったケースについて考える。

1. はじめに

市場で商品または役務(以下、「商品等」と総称)を購入する際に、消費者は最初に、それがどこの誰の商品等であるかを認識・識別することになります。

これを「出所識別機能」と呼んでいますが、これが商標の果たしているもっとも基本的な機能です。似たような紛らわしいものが登場したのでは、混乱が起こります。そんなことが起きないように、「登録商標」という制度が設けられ、商標を登録した者には、「商標権」という一定の排他的効力(専用権と禁止権)が認められています(商標法25条)。

しかし、現実には、商標権侵害を巡る争いがいくつも発生しています。なぜでしょうか。それは、商標に関する法律が、商標権者と商標権者でない者とのバランスを図るため、競合商品との識別力を失った商標(普通名称化した商標)に、商標としての効力を認めない立場をとっているからです(26条1項3号)。では、どうして登録された商標が普通名称化するのでしょうか。過去にあった実際の例で、この問題を考えてみることにしましょう。

2. 実際に起きた事例

登録商標の普通名称化といえばいろいろありますが、ここでは「正露丸」を取り上げたいと思います。「正露丸」といえば、「ラッパのマーク」でおなじみの大幸薬品の看板商品。この商標は、1954年(昭和29年)10月26日に登録され(登録番号545984)、現在でも大幸薬品が保有しています。

この商品は、さかのぼれば日露戦争、すなわち1900年代の初めから存在し、商標登録がなされた当時は、すでに「クレオソート(木のタールから抽出した化学物質で殺菌力がある)を主成分とした整腸剤」を表す普通の名称として多くの人に認識されていたと伝えられています。

こうした状況の中で商標の登録が認められたため、登録が認められた翌年の1955年4月に、和泉薬品工業などの利害関係者(その商標の登録によって損害を受ける可能性がある者)によって、特許庁に対し「商標登録の無効審判」の請求(46条)がなされました。しかし特許庁は、1960年4月に「登録維持」の審決を下しました。わが国には、商標が普通名称化した際に、その登録を取り消すという制度が存在していません。

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