パッケージにおける、情報量とデザイン性のバランスはたびたび議論になるポイントだ。社内において、どのような立場なのかによって意見が異なる。実証をもとにした学術における考え方を筆者が解説する。
優れた審美性と詳細でわかりやすい情報提供。両者の適切なバランスは、パッケージ・デザインに関わる多くの方にとって重要な課題ではないでしょうか。2020年3月に行われたローソンのPBにおける大胆なパッケージ変更は、その難しさを物語ってます。SNS上での反応を見てみると、おしゃれなデザインに好意的な声が寄せられた一方で、知りたい情報がわかりにくいという批判的な声も確認できます。
パッケージは、美的評価の対象となるため、ブランド構築における大きな役割が期待されるだけでなく、「棚の上の販売員」などと呼ばれる通り、情報伝達においても有効な手段となります。「マーケティングにおける5つ目のP」ともいわれる影響力を考えれば、審美性と情報提供のバランスに頭を悩ませる担当者が多いのもうなずけます。
過剰な情報による影響
近年、マーケティングや消費者行動などの研究領域では、過剰な情報に触れた消費者にネガティブな反応が生じる情報過負荷という現象がしばしば取り上げられます。ある研究では、24種類と6種類のジャムの試食における立ち寄り率と購入率が比較されています。その結果、24種類のジャムの試食には、多くの消費者が立ち寄ったにも関わらず、実際に購入した消費者はわずかだったのです。24種類もの選択肢を前にした消費者は、購入に踏み切れなくなったのだろうと考えられています。
情報過負荷に関する知見を踏まえれば、パッケージで提供する情報量においても適切な水準があると考えられそうです。
かつて筆者が行った研究では、コーンフレーク、カレールー、ノンアルコールビール、冷凍ピザ、グレープジュースの5つの製品カテゴリーにおいて、情報量の異なる5つのパッケージを作成し、それらに対する評価を比較しました。その結果、最もシンプルなパッケージ・デザインに3つの情報を加えたパッケージまではデザインに対する評価が向上したものの、さらに情報を増やすとデザインに対する評価が低下したのです。過剰な情報によるネガティブな影響が示唆されたといえるでしょう(図1)。
商品の訴求内容による違い
しかしながら、過剰な情報による評価の低下は、すべての人で引き起こされるわけではないかもしれません。例えば、多くの情報を欲している人は...