SNSで拡散されやすいかどうかは、パッケージや商品の見た目が左右する。ここでは、ケーススタディを踏まえて、SNSでシェアされやすいパッケージデザインの考え方を解説する。
本稿では、パッケージデザインをユーザー側のSNSでのシェア活動の視点から捉えて議論を深める。パッケージデザインとは意匠の美しさや精緻さに限定されない広義のブランドコミュニケーションの考え方・実践に基づくべきであるということを論じたい。
「シェアしたがる心理」から見たパッケージデザインの意義
2017年に宣伝会議より書籍『シェアしたがる心理—SNSの情報環境を読み解く7つの視点—』を上梓した。ここでの議論のポイントのひとつは、ユーザーはモノを撮っているように見えて、自身の体験(コト)をシェアしているという視点。そしてもうひとつは、それらのシェアには何かしらの「見せびらかし」のモチベーションが関わっているという視点だった(本稿の主題として重要なのは一点目だが、筆者は二点目を進化心理学の適応度標示の考え方と絡めて深める作業を新著で行っている)。
その考え方に基づくと、「SNSでシェアされるパッケージ」とテーマ設定した瞬間に、それはユーザー体験に照準しなければならないことが帰結される。結論を先取りするならば、だからこそパッケージもまた広義のコミュニケーションデザインの一部として設計されなければならないのだ。
ただし、SNSでシェアされるといっても、サービスごとの特性があり、ユーザーがシェアするモチベーションやそこでのシェアが持つ意味は一様ではない。紙幅の都合で端的にまとめるが、Twitterは面白い体験や発見、あるいはみんなの関心が集まるネタを気軽にシェアする場であり─最近ではLINEのタイムライン機能もここに近い─、Instagramはとっておきの体験をストックする場と対比的に捉えることができる。
さらに、YouTubeやTikTokも新商品レビューなど、気になるものを買って使ってみたら実際どうなのかという流れを時系列的に見せる場になっている。特に最後の動画プラットフォームの中でも、短尺動画(ショートムービー)の領域は、TikTokを筆頭に、Instagramの「Reels」、YouTubeの「Shorts」などがひしめきヒートアップしている。
ケーススタディから見えてくる3つの指針
ここでは、3つの切り口に沿って、比較的最近の事例をいくつか分析してみよう。
①限定的共時性=いま性
SNSのシェアを促す大きな要因はリアルタイム性(共時性)であり、裏返せば時間の制約としての「いま(しかできない)」性である。その「限定的共時性=いま性」に基づいたパッケージデザイン施策は、必然的に注目を集めやすくなる。
日本マクドナルドは50周年記念の特別パッケージを2021年にリリースした。アメリカ創成期のキャラクター「スピーディー」が登場するレトロなデザインが目を引く。コロナ禍でテイクアウトして家で食べる場合にも、これなら体験として特別なものになる。
明治「いちごオ・レ」も昭和53年生まれを前面に押し出したノスタルジックなパッケージを2018年に発売した。昭和レトロな文字フォントや、当時の情景が思い出されるような...