クレパスやクーピーペンシル、ピグマなど、時代ごとに新しい文房具を生み出してきたサクラクレパス。同社が大切にしている情緒的な価値について、ヒット商品を例に話を聞いた。
大人が楽しむ文房具
──様々な展開をされているクーピーペンシルのパッケージについてお伺いできますでしょうか。
クーピーは、1973年に発売した全芯タイプの色鉛筆です。パッケージのデザイン、色合いは発売当時から変わっておらず、そのことがこだわりになっています。それだけ完成度の高いデザインが当初からできあがっていたと言えます。「懐かしい」と言ってもらえますが、「古臭い」とは言われない。そういったノスタルジックなデザインであり、近代的でもあるデザインです。
そのため、色合いやイラストの配置なども厳密に管理しています。昔はコラボ商品などで多少、自由度のあるデザインも許容していたのですが、今ではイメージを変えないために管理体制も整えました。
クーピーペンシルの「クーピー(COUPY)」は、「打つ」「一撃」という意味があるフランス語の「COUP(クー)」という単語に「Y」を付けて、可愛らしく耳にやわらかく響くようにした造語です。軸全部が芯で、かつ消しゴムで消せるという今までの色鉛筆カテゴリーにはない画期的な商品でしたので、新市場を開拓するという攻める思いをこめて名づけられました。
──現在はどのように売れているのでしょうか。
購入されるのは、お子さんのために買う親御さんが多いです。いま親になった人にとっては、子どものころに使っていたブランドであり、お絵描きの時間のワクワクした思い出が残っています。このデザインを一目みることでクーピーだとわかるのは強みだと思います。
また最近では、大人自身が楽しむために購入されることも増えています。巣ごもりによって塗り絵の需要が出て来ているのです。外に出られないストレスの発散や、集中力アップを目的として注目されているようです。クーピーは手触りが他の文具と違いますので、久しぶりに使うと気分が高揚します。そういう感覚を思い出すのも、いい刺激になるのだと思います。
今年10月には創業100周年記念商品として...