総合通販の「ディノス」と「セシール」を運営するディノス・セシール。DMを使った既存顧客の購買促進施策やカタログアプリのリニューアルで巣ごもり需要で獲得した新規顧客も、リピーターとして育成している。
毎日サイトを訪問する顧客も
──貴社が運営する「ディノス」「セシール」の2ブランドは、老舗の総合通販として根強い人気を得てきました。それぞれのターゲットは。
現在、2ブランド合わせて約1500万人(2019年度)のウェブ会員がいます。実際の購買層は子育てが一段落した可処分所得の多い50〜60代です。
ただ、当社ではデモグラフィックな属性に基づいたターゲットやペルソナは重要視していません。ブランドとは、こちらからターゲットを定めて狙ってつくるものではなく、扱う商品やサービスによって決まるものだと考えるからです。
例えばディノスでは、あえて高価格帯の調理器具などの商品を揃えています。その結果、「憧れの暮らしを手に入れたい」「多少値が張っても付加価値の高い素敵な商品が欲しい」と考えるお客さまが集まっています。こうした循環が、これまでディノスやセシールのユーザー像を形つくってきました。
──中でも、優良顧客はどのような方ですか。
ディノスで言えば、比較的高価格帯の商品であっても費用対効果を考えたうえで購入していただける層になりますね。商品はもちろん、安心・安全を買っていただいているという側面もあるかもしれません。最もロイヤリティの高いお客さまは、毎日のように当社のウェブサイトを訪問して閲覧してくださいます。
当社の生命線はリピーター、特に優良顧客の方々であると言っても過言ではないくらい、彼らが売上・利益に占める割合は大きくなっています。ただし、必ず一定数の離脱も出るので、ビジネスを維持・拡大するにはその分を新規のお客さまで補うことも必要です。
コンテンツ制作力を活かす
──石川さんは、2016年にCECO(Chief e-Commerce Officer)として入社されました。顧客とのコミュニケーションを構築する上で、重視してきたことは。
カタログ通販のノウハウを活かしながら、商品やそれを使用する人にフォーカスを当てて、ビジュアルやテキストで丁寧に説明するコミュニケーションです。
ECにおける新規顧客の獲得とリピーター増加のための戦略を考えるうえで、まず目の前にあった課題が、長年総合通販で事業を展開してきた当社が、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングといった巨大なECプラットフォームと競合するようなEC戦略を前提としてよいのか、ということでした。
元々小売業である当社は、各ECプラットフォームと、マネタイズのモデルが異なります。例えばAmazonの場合、AWSというサーバー事業が大きな利益の源泉ですし、Yahoo!なら広告事業、楽天であれば金融系事業が競争力の源となっています。
同じ小売業のように見えても、彼らはECプラットフォームでトラフィックを集め、別のビジネスで収益を上げるというモデルを採用することができます。純粋に小売事業で利益を出さなくてはならない当社のモデルで彼らと真っ向から戦うという選択に合理性があるとは思えませんでした。
そこで、「大手ECプラットフォームと差別化できる点は何か」、と考えたところ、これまで培ってきたコンテンツ制作力だと再認識したのです。そこで...