コロナ禍でオープンしたものの、予定通りの集客が見込めていない新施設。新規顧客にリピートしてもらうために、どのような取り組みをしているのか。商業施設を多数取材している、ライターの北本祐子氏がレポートする。
オリンピックイヤーのはずだった2020年。春には多くの商業施設の開業が予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で延期に。緊急事態宣言解除後の6月ごろからは、それらの施設が続々とオープンした。ただ、人の多い場所への外出を控える人が多いことや、観光客の減少により、集客は難航している。
商業施設を継続的に運営していくにはリピーターの創出がカギになるが、これらのWithコロナの時代に開業した施設は、どのような取り組みをしているのだろうか。2020年8月に全体開業したグランスタ東京と、コロナ禍直前の2019年11月にリニューアルオープンした渋谷パルコの事例から、新時代の常連客づくりを探る。
混雑状況提供で安心感を醸成
東京駅構内にあるグランスタ東京は、当初は2020年6月17日に全体開業の予定だったが、8月3日に延期に。エキナカ施設としては日本最大級の153店舗へと拡充し、通勤途中の買い物からビジネスシーンの手土産、日常的な食事など大人のビジネスパーソンが選びたくなるこだわりのレストランや物販を揃えた。
運営会社である鉄道会館 新事業創造室長の播田行博氏によると「そもそも東京駅が混雑しすぎているため、飲食できない、行きたくないというマイナスイメージがあった」という。そこで全体開業の1年前から、リアルタイムに空き・混雑状況が分かるクラウド型サービス「VバカンACAN」を導入し、実証実験を開始した。
オープン時にはグランスタ内のサイネージなどにカフェ一覧を表示し、そこで混雑状況を見れば空席がある店舗がすぐに分かるようにした。「今までは東京駅構内にどんなレストランやカフェがあるのか分からなかったのですが、ひと目で分かるようにしました。近日中に地図もつく予定で、物販での活用も検討しています」。
さらに、「VACAN」導入テストの過程で、行列を把握できるサービス「VACAN Noline」も採用。待機している来店客が店頭で整理券を発券する仕組みをウェブ上でできるため、店頭に長時間並ばせることもなくなった。グランスタから離れたところにいても予約できるが、現時点までのキャンセル率は10%程度だ。
いずれも実証実験中にコロナ禍に見舞われたが、混雑解消の仕組みが結果的に密を避けるものにもなったため、新しいエリアにも早急に導入しようと一気に進めた。これらのツールはスマートフォンアプリ「東京ステーションナビ」内で利用できる。
現在、混雑状況については飲食店舗だけでなく...