宣伝会議では、9月3日〜4日に「アドタイ・デイズ10th Special Days」を開催した。ウェブメディア「AdverTimes.」の10周年を記念して行われた今年は、62人が登壇。9月10日に開催したオンラインイベント「アドタイ・デイズ オンラインEXPO」と合わせて5504人が参加し、広告界の“今と未来”を考えた。
コロナ禍を経て、利用が拡大しているキャッシュレス決済。利用者目線の情報はあるが、企業としてはどのように対応するべきなのか。フィンテック領域の事業を手掛けるインフキュリオンの丸山氏が解説する。
最近になって利用が拡大しているキャッシュレス決済ですが、世界各国の状況と比較すると、まだまだ日本は遅れていると言われています。実際に2017年の統計では、日本のキャッシュレス決済利用状況は21.3%と、世界的にみると半分以下の数字になっているのです。
その後、政府がキャッシュレス・消費者還元事業を行ったことで、2019年に26.8%にまで上昇しましたが、政府は将来的な目標として、80%の利用率を掲げています。
そして、新型コロナウイルスの影響下である6月末、当社で2万人を対象にウェブアンケートを行ったところ、電子マネーとQRコード決済アプリの利用率は右肩上がりであることが分かりました。決済アプリに至っては48%にまで増加していました。
さらに、コロナ禍における外出自粛の影響により、31%が自身の消費行動に変化があったと回答しています。その理由には、支払いの際に非接触を意識している消費者が増加していることが挙げられるでしょう。コロナ禍は、よりキャッシュレス化に拍車をかけたと言えそうです。
加盟店の利用コストも減少
また、キャッシュレス急拡大の背景のひとつとして、構造の変化も見逃せません。これまで、加盟店と利用者の間には様々な人が関わり、多くのコストがかかっていました。
しかし、キャッシュレス決済では、決済手数料を取らずともビジネスが成立するという構造に変化したため、加盟店の利用コストを下げることができるというメリットが生まれたのです。
さらに、決済アプリを採用することで、顧客データを容易に得ることができるという利点も存在しています。利用者(消費者)が、商品・サービスを予約するまでの過程や、予約から来店するまでの時間、消費金額に至るまで、様々な情報をデータとして追いかけ、蓄積することが可能になっています。
消費者にとっても今や、決済アプリであれば、スマートフォンをかざせば支払いが終わり、利用通知や残高、引き落とし日もその場で表示される。便利なシステムに変化しましたよね。
銀行ビジネスの新基盤「BaaS」
中国のアリペイやWeChat(微信)といったスーパーアプリと呼ばれているものは、デジタルにおける消費行動の中に、「キャッシュレス」が埋め込まれ、デジタルサービスと決済の連携を究極的に進化させたものです。
近年、海外ではこのようなスーパーアプリのほかに、日常利用に特化したスマホ専用銀行が続々と立ち上がっています。それらの銀行は、新たに銀行業界に挑戦することから“チャレンジャーバンク”とも呼ばれています。もちろん、設立には銀行免許の取得が必要なため、サービスを立ち上げるのは容易なことではありません。
そこで、銀行免許を取らずに、既存の銀行システムと連携することで顧客に金融サービスを提供する事業も生まれています。その基盤となるのが、現在、金融業界で注目を集めているBaaS(Banking as a Service(*))です。
米金融大手のゴールドマン・サックスも、2020年代に最も注目しているトレンドとして「BaaS」を挙げています。さらに、ドイツのベルリンに本社を置くフィンテック企業Solarisbankは...