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コロナ禍でも常連客をつくる

コロナ禍は「習慣化」のチャンス! ヒットに導く5つの新しい習慣

中川 悠(博報堂)

コロナ禍で常連客をつくるカギは、新しい生活様式に合わせた販促活動。「習慣化」を通じて売れ続ける仕組みをつくる博報堂の社内プロジェクト「ヒット習慣メーカーズ」を立ち上げた中川氏が、企画のヒントを紹介する。

まさに今、コロナ禍で人々の習慣が大きく変わろうとしています。習慣は1つひとつが独立して存在しているのではなく、連鎖的に変わるもの。例えば、夜型の人が早起きの習慣をはじめると、食生活や、仕事の仕方、運動、趣味に至るまで、すべてがガラリと変わったりします。ですので、一見、自分のビジネスに関係なさそうな習慣の変化に意外なチャンスが潜んでいるかもしれません。

そこで今回は、2017年に立ち上げた社内プロジェクト「ヒット習慣メーカーズ」の中で出てきた新たな習慣の兆しを大きく5つに分類して、どんな現象が起こっているのか、またそれを捉えて、どんなビジネスチャンスがあるのか、について考えてみました。

ネットでは「誰が売るか」が重要

私たちは、新型コロナで変わる習慣の兆しを「5D」と名付けました。Digital、Domestic、Distance、Downsize、Delightの頭文字をとって「5D」です(図1)。では早速、1つひとつのDについて、解説していきましょう。

図1 コロナ禍で変わる習慣の兆し「5D」

まず1つ目は「Digital」。デジタル化の進みが遅かった日本も、新型コロナウイルスの影響で一気にデジタル化の波が来ています。私の70歳になる母親も、最近初めてネット通販で買ってみたと聞いて、それを肌で実感しました。Digitalの習慣の兆しをいくつか見てみましょう。

①バーチャルライブ購買

オンラインでライブ中継をしながら商品を売っていく手法です。とても進んでいるのが中国。なんと車や不動産などの高額商材がライブ中継で売れているのです。他にも、有名シェフがリアルタイムで料理をつくる動画を配信して、最後にそれを再現できるミールキットの販売につなげる例もあります。

成功のポイントは「何を売るかではなく、誰が売るか」です。中国で高額商材が売れるのは、売っている人がいわゆるKOL(Key Opinion Leader)だから。消費者は「この人が言うなら間違いないな」とつい買ってしまうんですね。私自身も、4月に出した著書がビジネス系インフルエンサーのSNS投稿をきっかけに瞬間的にバカ売れし、「誰が売るか」の影響力を改めて実感しました。

②お試しフィルター

これは若者中心の現象ですが、カメラアプリを使って、モノを買う前に試してみるというものです。若者たちはスマホのカメラアプリを使いこなしていて、人物用、食べ物用、景色用、夜用とか巧みに使い分けています。そんな中、失敗しないEC購入のために「お試しフィルター」が生まれたのです。

新しいメイクアイテムを買うとき、新しい髪型に思い切って変えるとき、ネイルや眼鏡などの商品を買う前に、バーチャルで試してみて、自分で確認するだけでなく、SNSにアップして周りの人に意見を聞くなど、新しい購買行動が生まれているのです。

居住地域にこだわりが生まれる

2つ目の兆しが「Domestic」です。新型コロナの影響で、県や国をまたいだ移動がしにくい状況になりました。その結果、逆に自分の住む地域の魅力を再発見したり、住む場所を見直したりする人が増えています。私の友人にも、職場は渋谷だけど、近くに川の流れる自然豊かな田舎に引っ越した人や、サーフィン好きというのもあり都心から千葉の外房に引っ越した人も。リモートワークが進むと、そういった動きが進みそうです。

①ご近所経済圏

これは近所の魅力を再発見して、近所でお金を使うという話。息抜きに近所にあったホテルに泊まったり、普段はあまり行かなかった商店街で買い物をしたり、テイクアウトをしたりと、行動範囲が変わってきています。こ近所のお店に頻繁に訪れるようになると、愛着が増してさらに行きたくなるでしょう。

つまりご近所経済圏を制するポイントはいかに「ファン化」につなげるか。緊急事態宣言が発令されたとき、多くの飲食店が営業の危機にさらされましたが、ファンのついているところはクラウドファンディングなどで資金を集めていました。そもそも人口が減っていて、かつ人の動きが鈍くなる中で、新しいお客さんを狙うより、今のお客さんをいかに「ファン化」するかがとても大事になってくるのです。

②職住両得

今までは、職場へのこだわりから住まいを犠牲にしたり、その逆もあったりしましたが、これからは職場も住まいも両方ともにこだわるという現象が進みそうです。流行りつつある二地域居住(実は私も二地域居住者です)や、先ほど紹介したように職場は都会でも住まいは地方という人も増えるでしょう。私の知り合いは、車で自然あふれる場所に行き、そこでリモートワークをしています。いわゆるワーケーション(ワーク+バケーション)というやつですね。

ご近所経済圏と職住両得が進むと、「分散化」もまた進むでしょう。いろんな地域の魅力に応じて、自分にあった生活空間を選ぶ。イタリアはモザイク国家と言われ、いろんな地域が独自に発達していますが、日本もそれが進んだら楽しいなと思います。となると、企業のマーケティングも、地域特性をもっと考える必要が増すかもしれませんね。

距離を取るための新習慣

3つ目の兆しは「Distance」。これはいわゆるソーシャルディスタンスに関連するものです。リサーチ会社であるガートナーが毎年発表している「パイプサイクル」の2020年版でも、「ソーシャル・ディスタンス・テクノロジー」が急遽登場し話題になりました。私は「衛生」の価値は不可逆的なものだと思っていて...

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