表参道の青山学院大学近くに位置する青山ブックセンター本店。クリエイティブ系書籍が充実する中規模書店で、多くの常連客に愛されてきた。何度も通いたくなる秘密は、常に新しい発見のある売り場づくりにある。
コロナ禍で常連客の単価が向上
──トレンドにとらわれない選書や企画で多くの“本好き”に愛されています。常連客は、どのような属性の方が多いですか。
30代〜40代が中心です。私は2010年にアルバイトとして当店に入社してから10年ほど経ちますが、メインの客層に変化はありません。つまり、顧客がそのままスライドしているわけではないということです。
また、本に対する感度や情熱が高い方が多い印象です。単純に欲しい本を買うだけであれば、最寄り駅から数分歩かなくてはいけない当店よりも、オンライン書店や駅に近い大型書店に行く方が合理的ですよね。だからこそ、欲しい本があって来店する場合でも、「プラスアルファの1冊を見つけたい」というお客さまが多いと思います。
当店でお買い上げいただく方のうち、リピーターは3〜3.5割ほど。会員登録制のポイントカードもありますが、常連さんの中には非会員もいますので、きちんとデータは取れていませんが、一定数の常連客の方々に支えられていることは確かです。
特にコロナ禍ではそれを感じています。当店では、緊急事態宣言が発表されてからは、周辺で働くビジネスパーソンや学生のお客さまの来店が大幅に減りました。特に、平日のランチ時間や夕方は圧倒的に人が減り、売上にも大きく響きました。
それが、来店客数は前年と比べて70%前後のままですが、8、9月の売上はある程度復調しました。長年通ってくださっている常連客の方の購入単価が上がっているからこそ、売上が復調傾向となったのです。特に土日や連休中の売上がいいので、「青山ブックセンターに行きたい」と、当店を外出の目的のひとつにしていただけているのだと実感しています。
ベストセラーの次に読む本を置く
──お客さまに何度も足を運んでもらえる店舗をつくるために、どのような工夫をしていますか。
ひとつが棚づくりです。約5年前、当店の売上が落ちていたタイミングで、他店と同じようにベストセラーや映画化作品の原作などを揃え、入り口で大展開してみました。すると、売上はさらに下がってしまったんです。
このとき、「当店に来るお客さまは、そういう本を主に求めているわけではないんだ」と気付きました。ベストセラーは要するに、“他の書店でも売れたもの”。もちろん店頭にも並べますが、あえてうちの店で推す必要はなかったのです。
それ以降は、感度が高いお客さまが多いことを念頭に置き、「あのベストセラー小説を読んだら次は何が読みたくなるだろうか」などと“先”を意識して棚づくりをしています。
例えば、隣に並んでいる本どうしの親和性が、できるだけ高くなるように陳列する方法。同じ著者を揃える方法は一般的ですが、本の内容に即して「次も同じ分野を読みたいのか」「逆に少し違った分野が読みたくなるのか」などと考えながらつくるのです。
そのうえ、なるべく先入観を持つことなく、お客さまと本(売り場)との対話の場を提供したいと思っています。だからこそ、売り場にはPOPをほぼ置いていません。
また、当店は面出しや平積みをしている本が多い点も特徴です。いいと思った本は、新刊でなくても長く平積みします。このような点は「他店と違いますね」とも言われますが、特に差別化しようとしているわけではないんです。ここに来てくれているお客さまに真摯に向き合ってきた結果、こういう品揃えになっているのです。
こうした当店の店づくりは...