拡大を続けるeコマース市場では、さまざまなECサイトがある。ファンを生んだり、買い物自体が楽しかったり、さまざまな工夫をこらして成長を続けている4つのECサイトについて、ECエバンジェリストの川添隆氏が解説する。
EC成長に必要なメソッド
新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、日本全体で「仕事もプライベートも家で過ごす」ほうにシフトしています。私が聞いている限りでは業種によって状況は異なるものの、外出の機会が減ればおのずと「ECで買い物をする」機会は増えるでしょう。
2018年時点で、日本のB to Cの物販におけるEC化率は約6%で、中国や英米に比べ、ECのシェアは低いのですが、この1年間とそれ以降で、ECの重要度が急激に増すことは間違いないと思います。
本稿では、ECエバンジェリスト川添隆が、優れている(売りにつながっている)と感じるECサイト4つを紹介していきます。その前に、選出の基準についてお伝えします。
私がこれまでの経験で学んだ売上アップの方程式は、ECを運営する組織力を土台にした上での「販売手法×在庫・MD×集客」のかけ算です(図)。D to C、サブスクリプション、SNS活用などの手法論に目が行きがちですが、ECサイトの根本的な機能は小売商取引です。
売れるようにするためには、ブランドの意志とユーザーニーズに沿った上で、売れる商品を取りそろえ、売り方を工夫し、関連性の高いユーザーを店(サイト)に集める必要があります。[図]は、そのための方程式ですが、それぞれの項の意味をもう少し説明しましょう。
①販売手法:「用意された商品を売るためのあらゆる手法」という意味。販促施策、決済手段、ユーザーインタフェース、サイトやページのデザイン、配送までのスピードなどの売り方に関わるすべてを含む。
②在庫・MD:「ECに相性が良い商品を横(バリエーション)と縦(在庫量)に揃える」という意味。業種によって特徴は異なるものの、ECと相性が良い・悪いは必ずある。
③集客:「ブランドやお店として来ていただきたいユーザーや、関連性が高そうなユーザーを呼び込む」という意味。SNSや広告によるコミュニケーションだけでなく、「来てもらうためのサイトづくり」も含む。
これらの要素をふまえた上で、今回紹介する4つのサイトは下記を選定基準としています。(1)「販売手法×在庫・MD×集客」の3つの要素、どれかが優れている
(2)モールECサイトや、他メディアでも紹介されているような大手ブランドの自社ECサイトは除く
(3)ユーザー/EC担当者どちらの目線でも「楽しさ」を感じる
01 メンズファッション Dcollection
【販売手法×MD】
福井県あわら市に拠点を置き、2009年にスタートしたメンズファッションECサイト...