どんなふうに消費者と商品を出合わせるか。新規ユーザーの獲得を目指すなら考えねばならないポイントだ。「マジョリカ マジョルカ」が新宿駅で実施したデジタルサイネージ施策の企画プロセスを振り返る。
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パッケージ起点にブランドとの新たな接点
見慣れた駅構内に魔法がかかった。
若い女性向け化粧品「マジョリカ マジョルカ」は2月13日から19日にかけ、デジタルサイネージを用いたプロモーションを実施。まるで柱がガラス張りのショーケースになったような光景が、東京メトロ新宿駅構内に現れた。9本の柱の側面・計35面に異なる映像を映して実現した企画だ。
なぜこうしたプロモーションを行ったのか。そのねらいは新たな愛用者の獲得にある。
「マジョリカ マジョルカ」は2003年発売のブランドだ。ターゲットの中心は10代から20代。
パッケージや店舗什器、販促物まで一貫してゴシック風の雰囲気を持つ。細部に心を配ったブランドの世界には、発売当時から熱烈なファンがいる。
一方で課題もある。14年目を迎え、新規愛用者をさらに増やすことだ。そのためにも新たな接点を設ける必要があった。
企画を進める足がかりとなったのはパッケージだ。「マジョリカ マジョルカ」はパッケージへの好意度が比較的高い傾向にある。「これまで触れたことのなかった人でも、パッケージと出合うチャンスがあれば、関心を抱いてもらえるのではないか」
では、どんな機会をつくればよいか。具体化に入ろうという折、制作会社ビービーメディアから、あるデジタルサイネージを利用した企画が提案された。
9柱35面サイネージで見慣れた空間を非日常に
それは、東京メトロ丸ノ内線新宿駅構内にある、9柱35面のデジタルサイネージだった。通路「メトロプロムナード」から新宿三丁目方面にむかう途中にあり、1日15万人以上が通行する。
このデジタルサイネージの特徴は、4側面すべてに画面を備える8柱と、3面に備える1柱で構成した点だ。これに錯視の原理をかけあわせ、柱がパッケージの展示ケースのように見える企画に落とし込んだ。
「通行客の視点がある条件を満たせば、その瞬間に見慣れたデジタルサイネージが博物館になる。『マジョリカ マジョルカ』のコンセプトの『魔法』にも見合うし、パッケージを主役にすることで、ブランドと出合うきっかけにもなる」(資生堂の小助川雅人氏)
その場限りの希少性こそ話題を広めるエネルギーに
「マジョリカ マジョルカ」の今回の企画は、丸ノ内線新宿駅構内のデジタルサイネージ"専用"とでも言うべき表現だった。ひとつの素材を多くのメディアで使い回せるほうが、効率は良さそうだ。小助川氏はどうとらえたのか。
「 個々のメディアに最適化すると、体験に希少性が生まれます。希少性があるからこそ、メディアの注目を集められたり、口の端にのぼりやすくなったりするわけです。また、こうした『その場かぎり』や『二度とできない』といった要素をうまく用いると、ターゲットにも深い印象を残すことができます」
ひところに比べ、街で目にするデジタルサイネージは増えた。その分、ただ映像を流すだけでは、視線を集めづらくなった側面もあるかもしれない。
しかし、とメトロ アド エージェンシーの井上達也氏は言う。「テレビCMをタテ型画面で流すというケースが主流だが、注力する先がしだいに表現手法のほうへシフトしていくのではないか。個々の場所に応じたコンテンツ制作は、労力の要ることではあるが、今回の事例は、デジタルサイネージならではの表現への第一歩となったのではないかと思います」
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