
博報堂に入社し研修を経て、22歳の6月にコピーライターという名刺を貰った。大学を出たばかりの、なんの実績もない若造が。
メディアを見渡せばわかる通り、名乗るだけなら誰にでもできる。しかし肩書きとプロや本物といったものは私の中で全く別だ。
最初の仕事は、ITのシステムを売る企業の雑誌広告だったように思う。先輩たちと同じ打ち合わせで、会ったことも話したこともないクライアントのコピーっぽいコピーを書く。そんな自分に辟易していた。「ぽい」はプロではない認識だけはあった。企業をろくにわかろうともしなかったくせに、それ以上にクリエイティブディレクターが選ぶ基準がわからなかった。「そんなんじゃ褒められへん」。上司の言葉の真意が今ならわかるが、22歳には理解できなかった。いいコピーとはなんだろう。年鑑をひとり眺める時間が多かった。
ある日、JR九州のコピーが目にとまった。この時、コピーの大きな側面は「嘘ではない本質、見えなかった景色」だと強烈に理解した気がする。自分がそのようなコピーを書けるとは…