「足す」ことで生まれるオリジナリティ

Maurizio Cattelan,Untitled,2001,presented at Perrotin Paris in 2011.Photo:Attilio Maranzano.
Courtesy of Maurizio Cattelan's Archive and Perrotin
今から20年以上前、「横浜トリエンナーレ2001」に行ったとき、ある作品の前に人だかりができていました。
作品を見ている人たちは何だか楽しそうで、時折笑いも起きている。なんだろうと思ってのぞき込んでみると、壁の下のほうにミニチュアのエレベーターらしきものが2台埋め込まれていました。
誰の作品か確認したら、マウリツィオ・カテランというアーティストが同年に発表したものでした。2台のミニチュアサイズのエレベーターは、非常に精巧につくられていて驚きました。
扉の上にある数字が点灯していて、ある階に着くとチーンとベルが鳴って扉が開く。そして再び扉が閉まり、違う階に行ってしまう。少し経つと隣のエレベーターが開く。その内部には、階数ボタンもあり本物そっくり。実際には中の籠は動いていないんですが、本当にエレベーターが動いているようにしか見えない。
作品を見ているうちに想像力がかき立てられ、目が離せなくなりました。見慣れた日常の風景をミニチュアサイズにして非日常を生み出すことも、多くの人の心を捉え、言語を介さず笑わせることも、すごいことです。作品から情熱や努力も伝わってきて、それ自体もなんだか面白い。シュールでユーモアもある作品に、衝撃を受けました。