IDEA AND CREATIVITY
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デザインの見方

デザインとルールコミュニケーションとインサツ

田中義久

『アイデア No.273』(誠文堂新光社,1999)

美大受験のために浪人していたころ、デザイン誌『アイデア』(誠文堂新光社)の1999年3月号でGRAPHの記事を読みました。その記事は「デザインとインサツ コミュニケーションとルール 北川一成」と題し、北川さんが手がけたポスターや本、日本酒のラベルやパッケージなどが、16ページにわたって紹介されていました。まるで素人がデザインしたような表現があったり、皆目見当がつかないイメージがあったり。「こんなことしていいの?」と驚いたのを覚えています。だけど、なんだか目が離せなくなる。予備校で平面構成などデザインの基礎を習得していた身としては、とても衝撃的でした。

社会人になってからGRAPHに印刷をお願いすることがあり、北川さんにデザインを見ていただく機会がありました。それ以降、印刷と紙についての経験を積む中で、北川さんのデザインが少しずつ理解できるようになっていきました。当然、北川さんはデザインのルールをわかっている。

その上で、既存の枠組みにとらわれずに目的を最優先に考えた結果、ルールから逸脱した視覚的コミュニケーションをとっているのだと思います。たとえば同誌で紹介されていた「コンセプチュアリズムの新たな展開」という展覧会を告知するビジュアルも、文字組をよく見ると驚くほど手を加えています。絶妙なバランスで、人の目を引く仕掛けが散りばめられているんです。何だろうと注目させたり、あっと言わせたりすることは視覚伝達の醍醐味で、北川さんの...

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