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デザインの見方

「並べる」ことで際立たせる表現

清水恵介

「並べる」ことで際立たせる表現

Bernd & Hilla Becher『TYPOLOGIEN INDUSTRIELLER BAUTEN』(Schirmer/Mosel、2003)


「清水くんがつくるデザインの価値って何?自分の才能って何だと思う?」。デザイナーとして働き始めて数年経った頃、会社の先輩からそんな問いかけがありました。僕はすぐに答えられず、それから「自分は何が得意なのか」を考えるようになりました。そして、思い出したのが、子どもの頃から「並べること」が好きだったということ。当時は石を等間隔に並べたり、法則のある並べ方をしてみたり、とにかくいろんなものを並べて、ひとり遊びをしていました。大人になってからも、インテリアの家具や小物の配置がしっくりくるまで何回も並べ直したり、洗濯物をどう並べて干すかを考えていたり。僕にとって並べることは、飽きることのない楽しい癖のようになっていました。もしかしたら、そんな並べるということが、僕のデザイナーとしての素質や素養なのかもしれないと思いました。

ちょうど、自分の得意なことについて考えていた頃、日本民藝館(東京・目黒)が発行している小冊子に掲載されていた、柳宗悦さんの「陳列自体が技藝であり創作である」という陳列についての考え方を読みました。ものが美しく見えるように、説明は最小限に留めることや、位置や隣り合うものの大きさや彩り、並べる棚、光の具合、背景の色合いなども配慮するといった考えのもと、年に数回陳列替えをされているそうです。僕は学生の頃から民藝品に興味があり、日本民藝館に何度も…

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