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デザインの見方

人の生活や社会との関係性をデザインする発想の革新

佐藤夏生

人の生活や社会との関係性をデザインする発想の革新


2008年のことです。iPhoneが日本で発売され、今までの携帯電話とは全く違ったデザインがとても話題になりました。使ってみて、まず衝撃を受けたのが、画面の下にひとつだけある「ホームボタン」でした。

一般的な電化製品やリモコンにはたくさんのボタンが付いていますが、iPhoneはホームボタンがたったひとつ。それは、ホーム画面に「戻る」 ためのボタンです。アプリを介してさまざまな情報にアクセスしたり、作業したりしても、ホームボタンひとつでホームボタンひとつでホーム画面に戻ることができるのです。

また、ボタンといえば通常は出っ張っているものですが、iPhoneのホームボタンは凹んでいて、角Rの四角形のマークが入っているというディテールもそれまでにないものでした。これらも「戻る」を意味する新しいデザインだと驚きました。iPhoneのホームボタンは「新しい起点」の発明だと思います。発明といっても、いわゆる科学的な技術の革新ではなく、人の生活や社会との新しい関係性をデザインする、いわば発想の革新です。

マルチタスクが当たり前となった時代だからこそ「戻る」ことは次のアクションを起こす「起点」になる。そんな新しい便利、行動様式をこのホームボタンで形にしたと言えるのではないでしょうか。といってもApple社が公式に発表していたことではないので、あくまでも私の解釈ですが。

このiPhoneのホームボタンの革新に触れたことが、人の生活や社会との新し…

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