クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、作家の宮田珠己さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『新八犬伝』
石山透(著)(ブッキング)(紀伊國屋書店)
小学生のときに見たNHK連続人形劇『新八犬伝』のノベライズ。
この番組を見たことで、人生の目標が決まった。それは八犬伝のような小説を書くこと。
当時親に買ってもらったこの本は、テレビよりもずいぶん端折った内容だったけれども、それでも番組のエッセンス香る装丁などすべてが愛おしく、何度も読み返した。
『七人の侍』などもそうだが、一定の能力を持つ仲間が一致団結して敵と戦う構図は、いまや陳腐かもしれないが、自分としてはやはり萌える。とくに八犬伝は、一人ひとりが丁寧に描かれており、それぞれが主役を張るパートがありつつ、それらが互いに絡んでいく練られた構成には今でも感心させられる。
のちに曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』と読みくらべてみたら、ストーリーを忠実になぞっているようで、ところどころ人形劇用に大胆にアレンジされていたことを知った。
一瞬裏切られた気がしたものの、そもそも原作の『南総里見八犬伝』自体が、史実に相当脚色して書かれており、面白ければ史実や古典を勝手に書き変えてもいいのだと、逆に物語ることの自由さを感じて、目からウロコが落ちたのだった。
『写真集シルクロード』
NHK 取材班(編)(NHK 出版)
子どもの頃から旅好きだった私は、学生時代にNHK特集『シルクロード』を見てのめり込み、初めての海外旅行は中国のシルクロードへ行った。