クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、岩手県盛岡市にある「さわや書店」の外商部でさまざまなイベントや商品企画を手がける栗澤順一さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『プリンシプルのない日本』
白洲次郎(著)
(新潮文庫)
娘たちの児童書の侵食が止まらない、我が家の小さな本棚。弾き出された私の持ち分は、仕方なく職場に引越しさせてきた。そのなかにあって、何を言われようが、頑として本棚に居座らせてきたのが本書である。
少子高齢化は言うに及ばず、数々の難題を抱えたままの日本社会。国外に目を向けても、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、気の抜けない状況が続いている。そんな混沌とした時代が続いているからこそ、折に触れて本書を開いてしまうのだ。
戦後、日本国憲法の制定に関与し、通商産業省を誕生させ、電力事業再編の中心を担った白洲次郎。吉田茂の懐刀として、占領軍とも渡り合うほどの胆力も兼ね備えていた白洲だったら、この迷える子羊状態の日本社会をどのように導いただろうか。想像するだけでも心が躍ってしまうのは私だけではないだろう。
思いのほか白洲の著作が世に出ていないなか、直言集になっている本書は、ストレートに読者の心を打つ。
悲しいかな、見渡すと永田町には...