国民的アニメ・漫画からSNS発のキャラクターまで、さまざまなブランドとのコラボレーション企画を手がけてきた、ADKマーケティング・ソリューションズの村上絵美さん。これまでの経験を踏まえ、キャラクターコラボの極意を聞いた。IPビジネス全盛期他の企画との差を生むコラボの極意とは?
「コラボの必然性が見られている」
「ここ数年ほど、社内で営業に『キャラクターとのコラボ施策をクライアントに提案したい』と相談されることがすごく増えています。中でもデジタルを主戦場としたキャンペーンのお仕事がかなり多いです。ターゲティングができるので、キャラクターのファン層を鑑みて、ブランドがリーチしたい層に届けやすいためかと思います」と話す村上絵美さん。2020年に、サントリー食品インターナショナル「クラフトボス」と『クレヨンしんちゃん』とのコラボ(01)で、父・ひろしの日々の頑張りに注目したコラボムービーを手がけてから、社内で"IPコラボの人"として知られている。
自身も日々コラボレーション企画を提案するなかで、最近の変化をこう話す。「以前は単純に人気だからという理由だけでの起用だったり、キャラクターのセリフをもじる・キーカラーをブランドカラーに変えるといった、IP自体の訴求力に委ねたストレートなコラボでも通用したかもしれません。ただ世の中に同様の企画が無数に増えた今、クライアント側も"なぜこの作品で、それが企業やブランドらしさといかに合致しているか"、つまり双方が組むことの必然性をシビアに見ています。コラボ企画ではこの点が何よりも大事で、しっかりと立脚できていないと通すのは難しい。国民的なアニメや漫画でも、SNS発のキャラクターなどでも、それは同じだと思っています」。
ではその必然性を、どう見出しているのか。村上さんが企画を担当し、23年5月から断続的に実施されている、サントリー食品インターナショナルの「BOSS」「割るだけボスカフェ」とアニメ『SPY×FAMILY』の企画では、設定とストーリーの中の描写に着目した。まず、昼夜問わず二足のわらじで忙しく働き、慣れない家庭生活に奔走する主人公の「ロイド・フォージャー」とパートナーの「ヨル・フォージャー」は、現代の忙しく働く親の象徴であり、その2人を超能力で陰から手助けする「アーニャ・フォージャー」は「働く人の相棒」と打ち出してきた「BOSS」とぴったりだった。
さらに「『SPY×FAMILY』ではテーブルにコーヒーや紅茶のカップが3つ置かれたシーンがたびたび登場します。これはあくまで私の解釈ですが、バラバラだった3人が出会い家族となったことや本当の家族として深まっていく絆を象徴的に描いているのかな、と感じていました。そういった点から、『SPY×FAMILY』と『BOSS』ブランドがコラボすることで、"日々頑張って働く親たちとその家族を応援する"という双方にとっての共通するゴールを設定できると考えたんです」と村上さんは話す。