アクセシビリティ
Innovation ≠ technology
Innovation ≠ technology
最先端テクノロジーを使っているだけの事例は、数カ月で古く感じられてしまうような一過性のものが多い。それよりも、普遍的に人々の生活や価値観を変えられたかどうか、それこそがイノベーションだ。インクルージョンとアクセシビリティの両立が今後のカギになると感じた。(杉山元規)

杉山元規
Droga5(Accenture Song ) グループクリエイティブディレクター
新たなビッグキーワードの予感
カンヌライオンズのイノベーション部門の審査では、「それは誰もが使えるか」「ハンディキャップがある人でも使えるのか」「肌の色や人種による不利益はないか」、そして「必要な人が必要な時に買えるものであるかどうか」。こうした幅広い意味での「アクセシビリティ」が議論になった。どんなに優れたアイデアでも、一部の人のためのものであったり、高価すぎたり、特定の人種に不利益があるようなものは認めないという考え方だ。何かしらの障害を持つ人々は、世界で約13 億人いるといわれている。プロダクトやサービスの外側にいた人を、どうやって包摂するか。人間性と想像力で解く、この種の課題はまだ至るところに残っている。「アクセシビリティ」は「サステナビリティ」と並ぶビッグキーワードになるかも?(細田高広)

細田高広
TBWA\HAKUHODO チーフ・クリエイティブ・オフィサー
Cannes Lions /イノベーション部門
「アクセス」が新たな市場にも繋がる
今までアクセスできなかった人=潜在顧客=今までにないマーケット。ハンディキャップを持つ人々がApple製品のアクセシビリティ機能を用いて人生を楽しむ様子を描いたAppleのムービー「The Greatest」や、ステージが見えづらいことが理由で売れにくいコンサートの席を視覚障害のある人々に提供するMusic VibeとFunTicketの取り組み「Blind Seats」などの受賞作は、プロダクトやエンタメに誰もが平等に触れる機会を提示している。(多賀谷昌徳)

アクセシビリティ機能を活用する人々の姿を描いたApple のムービー「The Greatest」。

「Blind Seats」では、視界が悪く売れ残るコンサートの席を視覚障害者へ提供。

多賀谷昌徳
GREY Tokyo CCO /エグゼクティブクリエイティブディレクター
ADFEST /フィルム・アウトドア・プレス・ラジオ&オーディオ部門
文化理解の促進
オーセンティシティ
文化的にも、ターゲット心理に対してもオーセンティックか(=本物か・正真正銘か)が、ブランドが社会により深く意味のある繋がりづくりに役立つという考え方が、今年のカンヌライオンズの複数部門でキーになっていた。(張ズンズン)

張ズンズン
博報堂 グローバル統合アートディレクター
Cannes Lions /デザイン部門、Spikes Asia /デザイン・インダストリークラフト部門
審査の場でも文化や文脈を重視
審査員により多様性を確保し、各地域の多様な文化と、その文脈を踏まえた事例をきちんと評価しようという流れがある。また、各ブランドも、「広告」「情報」ではなく「文化」としてユーザーと関わろうとしている。(小山真実)

小山真実
電通 コピーライター/クリエーティブプランナー
Cannes Lions /ソーシャル&インフルエンサー部門(ショートリスト)
応募者側の工夫も
The One Showのデザイン部門とD&ADのアートディレクション部門の審査をしたが、世界中の審査員が審査するため、各国の深い文化や商品のバックグラウンドを把握していないこともあると感じた。よって共通の評価基準が「明快なアイデアとデザイン」になってくる。日本の応募作で質の高いデザインも、ショートリストに残らないものが複数あった。あくまでアワードに限った話だが、応募する際は背景をもう少しわかりやすく伝えられる工夫があると受賞に近づくと思った。(窪田新)

窪田新
電通 アートディレクター
The One Show/デザイン部門、D&AD/アートディレクション部門
審査員の文化の理解度にも違い
カンヌライオンズのフィルムクラフト部門では対面で審査を実施。そのため時にはジョークを挟むなど、人の個性も垣間見え、議論は建設的な空気が生まれやすかった。文化の違いによる着眼点やアプローチ方法における価値観の重みなどを共有、確認し合いながら議論が進んだ。改めて実感したのは、欧米勢は近い価値観で仕事をしている点で話が早く、アジア圏に対する理解が少ないのは物理的な距離感があるためで、理解はしつつも、距離的には近いはずなのに南米やアフリカに対する理解が少ない...