IDEA AND CREATIVITY
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AIの民主化で際立つ人間・文化の視点 世界のクリエイティブ

海外アワードに見るAIとの共創の可能性/AIとの関係性

今年の各アワードにおいて、大きな話題となっていたのはやはり「AI 」。
クリエイターと生成AI の関係をどう考える?審査過程でAI 活用作品をどう捉えた?


人間らしさを拡張する存在

嶋浩一郎
博報堂 執行役員/博報堂ケトル クリエイティブディ レクター

人間とAI が戦っても意味がない。人間の持つ人間らしさ、クリエイティビティ、イマジネーションを拡張するためにAI と協業するのが一番。今、そのやり方を世界中のクリエイターが模索しているというのが大枠の見立て。同時にクリエイターは他者のクリエイティビティを尊重すべきであり、著作権の問題など合意形成を迅速に進めなければと、生成AI の進化の劇的なスピードを見て感じている。(嶋浩一郎)


「Supercharging Creativity」

出村光世
Konel 代表/知財図鑑 知財ハンター

カンヌでも生成AI についてさまざまな意見が交わされていたが、おおむね好意的な反応が大半を占めていたように感じる。特にOpenAI のセミナーで「Supercharging Creativity」というキーワードが繰り返し使われており、AI との共創はクリエイターが大きくジャンプするためのバネになるという風潮が強かったし、それには賛同する。これまで企画を提案する前に類似事例がないか「ググる」という行為をしていたように、一度は生成AI に向き合う習慣ができるはず。(出村光世)


AI は「拡張知性」と捉えたい

細田高広
TBWA\HAKUHODO チーフ・クリエイティブ・オフィサー
Cannes Lions /イノベーション部門

TBWA\HAKUHODO ではクリエイティブは全員、生成AI を使いこなせるようにトレーニングをしてきた。けれど学ぶほどに、熱狂するというよりは、冷静にAI と付き合えるようになる。個人的にはAI はArtificial Intelligence(人工知能)というよりAugmented Intelligence(拡張された知性)と捉える立場をとっている。クリエイターの代わりになるのではなく、クリエイターの増設された知性として、今後もいいブレスト相手や、いい作業仲間にはなってくれるのではないか。(細田高広)


共存共栄の時代へ

岡村雅子
電通 クリエーティブディレクター
The One Show/フィルム&ビデオ部門

審査を担当したThe One Show は締め切りが他の広告賞より早く、カンヌほど生成AI 系エントリーはなかった。個人的に良いと思ったのは、菓子・飲料メーカーであるCadburyの「Shah Rukh Khan-My Ad」(カンヌライオンズのクリエイティブエフェクティブネス部門グランプリ)。ボリウッドの大スターであるシャー・ルク・カーンを起用したテレビCM をつくり、生成AI と位置情報を活用して、広告予算の無いインド中の小売店が自分用にカスタマイズしたCM をつくれるようにした。これは生成AI の正しい活用方法。AI も良いプロンプトから学べて、その結果人間もハッピーになれる共存共栄の時代が一番だと考える。(岡村雅子)


重視すべきはアイデア

石原和
マッキャン・ワールドグループ エグゼクティブクリエイティブディレクター Cannes Lions /ブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門(ショートリスト)

カンヌライオンズのブランドエクスペリエンス&アクティベーション部門でも、ジェネレーティブAI(AI に絵を描せる、AI にアートをつくらせる、ChatGPT を使った施策など)関連が数多くあった印象。ただ、審査員の間で議論になったのは、そのほとんどが真のアイデアを欠いていた、という点。素晴らしいクラフト、エグゼキューションには何千ドルも費やしたが、アイデアとコネクションはほとんど無いといった作品も多かったと思う。テクノロジーとアイデアを混同してはいけない、という意見が審査員から多く出ていた。一方で、AI やデータを使って以前は不可能だったアイデアを可能にできることも痛感した。AI や機械学習によって、これまで数カ月かかっていたことが数分でできるようになったり、スケールを大きくしたりできるという点は審査員全員が可能性を感じていたと思う。また、今後はAI が審査する生成AI のカテゴリーができるのでは? みたいな話も(笑)。ただ、カンヌにおいては上位のアワードを獲った作品の中にジェネレーティブAI やChatGPT を使ったものはほとんど無かったと思う。むしろアナログなアイデアが賞を取っていた印象もあり、どうやってテクノロジーを駆使して人間らしいストーリーを紡ぎ出すのかが、まだまだ課題になっていくのだろうと感じている。(石原和)


「AI っぽい作風」に留まっていないか

窪田新
電通 アートディレクター
The One Show/デザイン部門、D&AD/アートディレクション部門

審査したThe One Show のデザイン部門、D&AD のアートディレクション部門などではAI を使った作品は多数あったが、全てが「AI っぽい作風」に留まっていて評価できなかった。AI ではなく自分でつくればいいじゃん!と思ってしまった。AI もあくまでひとつのツール。今後、どんな作品が生まれるか楽しみに...

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