クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、マンガ家でありイラストレーターとしても活躍するながしまひろみさんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『風の谷のナウシカ』
宮崎駿(著)
(徳間書店)
もともと、小学校低学年くらいの頃からアニメ版が大好きでした。強くてやさしいナウシカはヒーローで、内向的で孤立しがちだった自分をいつかメーヴェで助けに来てくれるんじゃないかと、よく空を見上げていました(暗すぎる)。
その後、少し大きくなってから読んだのがこの原作です。スーパーの書店コーナーで、なぜか5巻だけ親にねだって買ってもらいました。マンガ版の世界はより複雑で、ナウシカはヒーローというよりもボロボロで疲れていて。当時はよくわからなかったけれど、わからないまま読むのが面白く、コツコツと残りの巻を集めて夢中になりました。
ナウシカが矛盾を抱えてぐちゃぐちゃになりながら前に進んでいくさまに、何度読み返しても心が震えます。大人になってから読むと、ナウシカの孤独を思ってまた泣いてしまいます。人間に心を開けないから、蟲と通じ合ってしまったのかも。
最も印象に残っているのは、あんなに強いナウシカが、王蟲たちが死んでいくのを見てメーヴェの上で子どもみたいに泣くシーン。「わたしをひとりにしないで王蟲……」マンガの中ではまたすぐに立ち上がるけど、もっと泣かせてあげたかった。