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デザインの見方

先入観なく眺めて覚えた美しいデザインのルール

前田高志

Josef Müller-Brockmann『The Graphic Designer and His Design Problems』Arthur Niggli(1983)

任天堂でグラフィックデザイナーとして働き始めて2年目の2002年、東京・六本木にあった青山ブックセンターで、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンの『The Graphic Designer and His Design Problems』と出会いました。店内に並ぶ膨大な本の中で目を引いたその表紙は、鮮やかなオレンジ色とベーシックな書体のみでデザインされていて、シンプルだけど存在感がありました。手に取ってページをめくると、どの図版も見とれてしまうほど美しかった。「これは手元に置いておくべき本だ」と直感的に確信し、購入しました。

ブロックマンといえば、スイスを代表するグラフィックデザイナーで、グリッドシステムを確立した人です。しかし、当時の私は、ブロックマンのこともグリッドシステムのことも知りませんでした。本には解説文も掲載されているのですが、ドイツ語なので読めなかった。だけど、その“何も知らない”ことが今となっては良かったと思っています。先入観のない状態で、ひたすら美しいデザインを画集のように、うっとりしながら眺め続けました。仕事に行き詰まったときや、気分転換したいときなど、暇さえあればページをめくって見ていたんです。

その結果、ブロックマンの美意識や、グリッドシステムを体に染み込ませることができたのだと思います。幼い子どもが言葉を話せるようになるのは、文法からでは...

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