クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、2021年に『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』を公開した映画監督の青山真也さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
マルコス ここは世界の片隅なのか グローバリゼーションをめぐる対話
イグナシオ・ラモネ(著)、湯川順夫(訳)
(現代企画室)
学生時代に受けた社会運動についての講義がとても刺激的で、いわゆる街頭を練り歩くデモからは一歩踏み込んだ行動を伴ったものの紹介が多かった。
空き家占拠運動やスーパーの労働乗っ取り運動など、直接的に生活や命につながる活動ながらも、映画館や美術館で出会う作品よりもずっと面白くて、強度が高い表現のように感じた記憶がある。
一番印象に残っているのは、先生が少々興奮しながら「覆面のアイドルです」と言って紹介したマルコス副司令官についてだった。彼はサパティスタ民族解放軍という、1994年メキシコのチアパス州で植民地主義による抑圧とグローバリズムによる貧困化に対して蜂起した先住民組織のスポークスパーソンである(自身は非先住民)。表紙の写真はいかにも物騒だが、武装しながらも非暴力の対話路線で活動を続け、その発言が常にユーモアに溢れていて秀逸だった。彼が、イタリアの名門サッカーチームであるインテルにサッカーで勝負するように挑戦状を送った逸話を聞いて気になってしまい、この書籍を買った。
ちなみにインテルの元主将サネッティはサパティスタに寄付金を送ったことがあるらしい。