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デザインの見方

ロジカルに説明できる独創的なインスタレーション作品

田中千絵

Wolfgang Laib. Ausstellungskatalog(1992)

「ピオトル・コヴァルスキー/世紀末サイエンス」水戸芸術館現代美術センター展覧会カタログ(1993)

ヴォルフガング・ライプというドイツ出身のアーティストの作品集は、美大生の頃、ワタリウム美術館の1階にあるミュージアムショップ「オン・サンデーズ」で購入しました。伯父である田中一光のデザイン事務所 田中一光デザイン室でアルバイトをしていた頃のことです。

ライプは、医学の博士号を取得後にアーティストに転身した経歴を持ち、私はこの作品集を通じて初めて知りました。本書には牛乳や花粉、お米、蜜蝋などを用いたインスタレーション作品が掲載されています。大理石を器のように加工し、その中にギリギリまで牛乳を張って石のように見せた「ミルクストーン」という作品や、会場の床に花粉をじゅうたんのように敷き詰めた作品など、今も見返すたびにワクワクしています。

作品集には、制作過程も掲載されています。植物から自ら採取し、床に敷き詰めた花粉は、展示が終わると瓶に戻すそうです。アーティスティックな作品の背景にある地道な作業にも、なんだかとても惹かれています。

ライプのインスタレーション作品の魅力は、牛乳や花粉のような誰もが知る、親しみのあるアイテムを独自の視点で捉え、新しい見え方に変換しているところ。素材自体は加工せず、自然のまま。だけど独自の見立てで、今までにない作品に仕立てています。「Five Pollen Jars」という花粉を5つの瓶に詰めて並べた作品は、よく見るとそれぞれ花粉の色のトーンが...

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