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デザインの見方

想像力をかき立てる 抽象表現と余白の効果

庭野広祐

イエラ・マリ『あかい ふうせん』(ほるぷ出版)

無印良品で販売している動物の絵柄入りプリントTシャツのデザインとイラストを、2007年から担当しています。無印良品キャンプ場のポスターのビジュアル用に描いたてんとう虫や芋虫などのイラストを、Tシャツにも展開したのが始まりです。無印良品の仕事をきっかけに、イラストを描く機会が増えたので、参考に絵本を手に取るようになりました。その作品のひとつが、イエラ・マリさんの『あかい ふうせん』です。

イエラ・マリさんは、グラフィックデザイナーでもある作家で、何冊か絵本を発表しています。私は子どもの頃から絵本は好きでしたが、イエラ・マリさんの作品は持っていませんでした。以前から気になっていたので、数冊購入してみてとても感動しました。いずれの絵本も本文はなく、『あかい ふうせん』は、赤い色面と黒の線画だけで構成されています。シンプルだけど洗練されていて、グラフィカル。子どもだけでなく大人も楽しめる世界観が特徴で、一般的な絵本のイメージとは違います。

本書で特に参考になったのは、固定観念にとらわれない「発想の仕方」や、モチーフを別の何かに「見立てる」という考え方です。特にユニークなのが、ストーリーが飛躍していくところ。ガムが赤い風船になり、リンゴになる。ここまでは、なんとなくイメージできるのですが、そこから先の発想がとても独創的です。リンゴは割れて花になり、さらに蝶から傘へと変化します。この絵柄の...

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