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デザインの見方

「象徴的なデザインのルーツ」

北川一成

岡本太郎氏がデザインした、1970年当時の「太陽の塔」。

(写真提供:大阪府)

抽象的な絵ばかり描いていた、ちょっと風変わりな子どもでした。私が抽象表現に目覚めたのは、1970年に開催された日本万国博覧会(通称、大阪万博)で、芸術家の岡本太郎さんがデザインを手がけた「太陽の塔」を見たことがきっかけです。

50年ほど経った今も、太陽の塔は大阪にある万博記念公園に現存しており、巨大な実物を見ることができます。当時5歳だった私には、今よりもさらに大きく見えたはずです。会場でそびえ立つ太陽の塔を見上げたとき、その迫力に圧倒され、まるで雷に打たれたような衝撃を受けたのを覚えています。

幼少の頃から絵を描くことが好きで、祖父が買ってくれた百科事典に載っていた、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」のような写実的な絵に憧れていました。写真のように、見たままそっくりに描けるようになりたいと思っていたんです。けれども、太陽の塔を見てからは、摩訶不思議な抽象的な絵ばかり描くようになりました。当時、母も困惑していたようですが、私に絵を描くことをやめさせたりせず、何も言わずに見守ってくれていました。そのおかげで、私も周りの評価などを気にすることなく、のびのび自由に絵を描いて育ちました。

抽象的な表現にはまった私は、百科事典に載っていたパウル・クレーやピート・モンドリアンの絵をまねして描いたり、祖父がたしなんでいた書や雪舟の水墨画、骨董などにも興味を持ったりするようになりました。文字の...

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